【アパホテル株式会社取締役社長 元谷芙美子氏 セミナーレポート】コロナ禍で業界大打撃でも「黒字経営」を続けられる経営哲学とは

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企業のバックオフィスを効率化させる「oneplat」が、「私が社長です。」のフレーズと個性的なファッションで知られるアパホテル社長・元谷芙美子氏を招いて特別セミナーを開催しました。今回のコロナ禍のなか、かつてない逆風にひんしたホテル業界の中で、昨年の決算で見事なV字回復を遂げたアパホテル。その秘密はどこにあるのでしょうか。さまざまな経営施策で業界をリードしてきた元谷氏にその経営哲学を伺い、創業以来続く「黒字経営」の要因を迫れればと思います。自ら「スーパーポジティブ」と語る元谷氏らしく、笑顔の絶えないセミナーとなりました。

①苦境をチャンスに変える「レジリエンス経営」がカギ

新型コロナウイルスの出現はホテル・観光業界に未曾有の打撃を与えました。約3年におよぶコロナ禍は、アパグループにも大きなマイナスとなったことは言うまでもなく、元谷氏も「大惨事といえるような状況」と表現してコロナショックの打撃について語りました。

その中で同社は2022年11月の決算で、V字回復といえる結果を残しました。これまで毎期300億円を超える経常利益を計上してきましたが、もっとも厳しかった2020年11月の決算では、赤字になりそうなところを踏ん張り、10億円の経常利益を確保。ホテル業界全体に向けて、「アパが頑張っているのだから」というエールを送ることになったことも意義があったと話します。

振り返ってみれば、同社は創業以来の52年のあいだ一度の赤字もありません。その間の納税額も実に2,500億円を超え、「会社の一番の目的であり社会貢献は、需要を創出、雇用を創り出し、適正利益を上げ納税の義務を果たすこと」と元谷氏は話します。その3つの要素が、永続的に続くことが起業の健全な姿であり、それに向かって邁進してきた結果が、今日の業績や業界のトップランナーとしての地位を築いてきたのだと説明しました。

創業後のオイルショックや、その後のバブルの到来と崩壊、リーマンショック、今回のコロナ禍と、約10年ごとに経済や市況の大きな波がやってくるたびに、それを乗り越えてきたアパホテル。レジリエンス(困難を乗り越え回復する力)という言葉を胸に、苦境のときこそチャンスに変えるという想いで事業を進めてきたといいます。

アパホテルには現在、2,000万人を超える累積会員があり、こうしたコアな当社のファンの支援があったからこそ、数々の逆境も乗り越えることができたと元谷氏は話しました。まさに半世紀を超えて培ってきた信頼に支えられた結果だといえるのではないでしょうか。

②ブレない戦略で顧客目線を重視したブランディング

いまホテル業界でも様々なDXを活用したサービス、バックオフィスの変革が進んでいますが、アパホテルは業界でもっともDXが進んでいる企業であるとの自負があると元谷氏は話します。例えばいち早くアパホテル公式アプリをリリースし、非接触での「1秒チェックイン」「1秒チェックアウト」が可能なサービスを開発・導入するなど、コロナ禍において有用性の高い価値を提供することができたこともその一つです。

また、アパホテルのファン獲得の観点から開発した「アパ社長カレー」も好評ということで、リリースして10年を経て、1,000万食を超える大ヒット商品になっています。この商品のパッケージには元谷社長の顔写真が入っており、ネーミングも「アパ社長カレー」。実は同社の役員会では当初、「食べ物にまで社長の写真を載せて、ネーミングもそれでは、どんなに自己顕示欲が強いんだと思われる」と反対されたそうです。

けれども当時のグループ代表である元谷外志雄が「アパホテルのイメージとマッチした商品にしたい」と主張し、商品の概要が決定。ホテルの魅力と元谷社長の知名度などの相乗効果も相まってのヒットに繋がったということです。こうしたブランディングも、ブレない戦略で顧客目線を大事に展開することで成果が出ているのだと感じます。

「アパ・コーポレートクラブ」の活動も好評とのこと。現在、約900社の会員入会があり、協力企業・関連企業との連携を強め、さらなる企業風土の向上やホテル事業の価値を高めていくための組織づくりを推進しています。こうした確固たる横のつながりが、時代の荒波にも果敢に立ち向かえる、同社の強みになっているともいえそうです。

③社会情勢に敏感に反応していかなければ人材は集まらない

昨今、消費者物価は上がり続け、私たちの暮らしに深刻な影響をもたらしています。その中で同社はいち早く、昨年は期中2度に亘って累計1万円のベースアップを実施しました。厳しい業界の市況の中でも、社会の状況や情勢に反応していく経営をしていかなければ、新たな優秀な人材は集まらないという元谷氏の考えに基づいたものです。

何よりも大切なのは人間環境であり、従業員の働くモチベーションを高めていくこと…という考えのもと、何よりも社員全員が笑顔で働くことができる環境づくりに重きを置いています。そうすることで、会社の雰囲気がいっそう良くなり、業績が伸びてさらに給与が上がる。その結果、社員がいっそう笑顔になって働ける――こうした好循環を実現するために、アパグループは家族経営で上場もしていません。「社長が明るく楽しく頑張っていなければ、会社の雰囲気も良くなりませんから」という元谷氏の笑顔がとても印象的でした。

そして2023年3月1日、JFA(公益財団法人日本サッカー協会)のスポンサーに、アパホテルはホテル業界で初めて選出されました。同社はこれまで社会貢献の施策に注力しており、今回の日本サッカーへのスポンサードもその一つということです。

社会貢献でいえば、先のコロナ禍のまっただなか、新型コロナ療養施設として同ホテルが多くの客室を提供したことは社会的にも大きな話題になり、評価されたのは記憶に新しいところでしょう。こうした社会貢献活動やその姿勢を認められたことが、JFAの公式スポンサーとして、業界初の選出という結果にもつながったのではないかと思います。

今後の目標として同社は、2027年11月期にはグループ全体で連結売上2000億、経常利益450億円の達成を掲げています。加えてホテル全体の客室は、2027年の3月期末には15万室に増やすことが目標です。元谷一志CEOを中心とした新たなグループ体制のもと、こうした目標に向けて頑張っていくということです。

④一刻たりとも無駄にせず、今この瞬間を大切に歩むこと

セミナーの中で、元谷社長は自らの幼少期についても触れました。小さな頃からスーパーポジティブなプラス思考の子どもで、「いつもアドレナリンが出まくっていた状態」だったそうです。逆境にも絶対にあきらめず、物事を成し得るという「レジリエンス精神」は、幼少期から培われたマインドだったのでしょう。生まれもっての社長向きの気質であったことがうかがえるお話でした。

たとえマイナスの状況下にあっても、人間はどう考えるかでその後の方向性や人生自体が決まる、と元谷氏は話しました。人生とはただ継続していくのではなく、今日の今のこの瞬間こそが、自分の宝物の時間であることを認識することが大切である――その想いに至ったのは、ある女性社長からの言葉がきっかけになったそうです。

それは、「元谷さん、あなたは何気なくいま生きているかもしれないけれど、昨日つらい死を迎えた方にとって、心の底から生きたいと思っていたのが、今日のこの今、瞬間なんですよ」という言葉だったそうです。続けて、「当たり前のように今日や明日が来る。毎日を当然のように考えているのなら、あなたの人生は値打ちがないですよ」と言われた言葉が深く胸に刺さり、以来一刻たりとも無駄にすることなく、今この瞬間を大切に歩んでいくことを肝に銘じて事業を行っていると話しました。

⑤経営は生きた経済に身を落とし、苦しみ楽しむことで花開く

ホテル事業を行う上での想いについて、元谷氏はある言葉を紹介してくれました。「歩み入る人に安らぎを、去り行く人に幸せを」――。これは、ドイツのローデンブルグ地方にあるジュピタール門の中側に彫刻で彫られている言葉で、同氏はこれを大切な哲学であり、信条にしているということです。

私たちのホテルに足を運んでくださった方には、心からの安らぎを感じていただきたい。そして帰路につかれる際には心から頭を下げ、お幸せと安全をお祈りする…約5,000人の社員が共有すべき想いとして位置付けているそうです。

ホテルとは、多くのお客様の寝食を預かるもので、予期せぬさまざまなことが起こり得るもの。命を預かる、大きな責任を伴う仕事だと言います。それを担う存在として、同氏は経営者としての人格形成はもちろん、人生のなかでの学びの機会を大事にしてきました。

59歳のときに早稲田大学大学院公共経営研究科修士号を取得し、2011年には同博士課程を修了。学び続けることの大切さと、それによって自分自身の人生がいっそう豊かになり、経営者としての知見の幅を広げてきたとのこと。その一方で、自ら経営を実践してきたなかで言えることがあると言います。それは、座学で積み重ねた論理だけで経営を上手に進めようとしても難しく、経営とは実際の生身の体で、生きた経済に身を落として、苦しみながら楽しみながら臨場感をもって実践することでこそ花開く、ということです。

実学の中で、奮って世の中のためになることをやっていく。自分だけ、会社だけのことだけではなく、世の中の、経済や社会にとってプラスになるように果敢に行動していきたいと、経営者としての「あり方」について語りました。日本のサムライ心――これからの若い人たちにとって、胸を張って、笑顔で堂々と誇るべき良い国をつくるために歩んでいきたいと話し、セミナーを締めくくりました。

■元谷芙美子(もとや・ふみこ)
アパホテル株式会社取締役社長

福井県福井市生まれ。福井県立藤島高等学校卒業後、福井信用金庫に入社。22歳で結婚し、翌1971年、夫の元谷外志雄が興した信金開発株式会社(現アパ株式会社)の取締役に就任する。1994年2月にアパホテル株式会社の取締役社長に就任。会員制やインターネット予約システムをいち早く導入し、全国規模のホテルチェーンへと成長させる。2006年早稲田大学大学院公共経営研究科修士号を取得し、2011年には同博士課程を修了。現在、アパホテル株式会社取締役社長をはじめ、アパグループ11社の取締役、日韓文化協会顧問、株式会社SHIFT社外取締役、株式会社ティーケーピー社外取締役を務める。また、全国各地からの講演依頼にも意力的に取り組み、地域社会の活性化に努めている。アパホテルネットワークとして全国最大の719ホテル110,395室(建築・設計中、海外、FC、アパ直参画ホテルを含む/2023年3月1日現在)を展開。年間宿泊数は約2,116万名(2020年11月期末実績)に上る。

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oneplus編集部

この記事の執筆者

  • 【アパホテル株式会社取締役社長 元谷芙美子氏 インタビュー】コロナ禍で業界大打撃でも「黒字経営」を続けられる経営哲学とは #1 苦境のときこそチャンスに変える「レジリエンス経営」

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