仮装経理はなぜ行われる?発覚した際のペナルティや修正経理の方法も紹介

仮装経理は本来あってはならない会計処理です。ではなぜ、このような会計処理が行われてしまうのでしょうか?本記事では、仮装経理とは何か、なぜ行われてしまうのか、発覚した際のペナルティや修正対応について解説していきます。

仮装経理とは?

仮装経理とは、実際は損失が出ているのに利益が出ているように見せることです。故意に架空の利益を計上したり、利益を過大に計上したりすることで、本来は赤字であるところを黒字として決算します。

これは、取引先や金融機関、株主に対して財務状況や経営状態をよく見せるためと考えられるでしょう。そして、利益を多く計上しているため、法人税の申告や納付も本来より多くなってしまいます。

仮装経理は税務上の呼び方

仮装経理とは税務上の呼び方であり、法人税法上では主に次の五条で定められています。

・仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う地方法人税額の控除(第十三条)
・仮装経理に基づく過大申告の場合の構成に伴う法人税額の控除(第七十条)
・欠損金の繰戻しによる還付(第八十条)
・更生に関する特例(第百二十九条)
・仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の還付の特例(第百三十五条)

粉飾決算との違い

基本的に同じ意味を表しています。ただし、粉飾決算においては利益を隠して損失に見せかけたり、本来の利益を少なく計上したりする逆粉飾決算というものがあります。逆仮装決算とはいいません。

仮装経理(粉飾決算)は、取引先や金融機関、株主からの協力を得るために、架空の利益を上乗せして赤字を黒字として決算することで、財務状況や経営状態をよく見せようとします。反対に逆粉飾決算は、売上高や利益を本来より少なく計上し、財政状態を過小評価することで、法人税の納付金額を減らしたいという考えから行われることが多いでしょう。

仮装経理の取引例

ここでは仮装経理の取引例を4つ挙げていきます。

・売掛金の過大計上:架空の伝票を作成し、売上を多く見せかけます。架空の売上であるため売上原価は計上されません。そのため利益を過大計上することができます。

・期末棚卸高と商品の過大計上:棚卸資産の架空計上や不良在庫を計上することで、期末の商品在庫を水増しして売上原価を減少させます。

・未払い債務の過少計上:売掛金等の債権を低く見積もることで貸倒引当金に計上する額を減らします。

・子会社を利用した架空売上の計上:グループ企業の場合は、子会社から受注があったものとして架空の売上を計上し、親会社の利益を多く見せかけます。

仮装経理が行われる理由

本来あってはならないことですが、実際に行われてしまっているのが現状です。納税額が増加するにもかかわらず、なぜ仮装経理は起こってしまうのでしょうか?ここでは、企業が赤字を黒字決算に見せかけたい理由について解説していきます。

1.業績を良く見せるため

株主は企業に出資する代わりに、企業が利益を上げたときに配当金の受け取りや株主優待等を受けとります。もし、業績が悪化すれば配当金の減少や株主優待の縮小が起こることもあるでしょう。

そのため、企業の業績が悪いと株主からプレッシャーをかけられることがあります。このような問題を解決しようと仮装経理に手を染めてしまうことが考えられます。

2.融資額を上げるため

企業の資金調達方法は様々ですが、最も利用されているものと言えば金融機関からの借り入れではないでしょうか。しかし、これはいつでもいくらでも借りられるというものではありません。

銀行の融資審査を通過し、財政状況におけるいくつかの条件を満たす必要があります。つまり、経営状態が悪いと銀行等の金融機関から融資をなかなか受けることができません。そのため、融資を受けたり、金額を上げたりするために仮装経理が行われます。

3.上場維持基準を満たすため

日本では、有価証券上場規程において上場維持基準が定められています。その中で提示されている条件の項目は、株主数や流通株式、売買代金、純資産の額等です。これらを満たすために仮装経理による水増しが発生する場合があります。

しかし、上場廃止基準において虚偽記載または不適正意見等の基準が定められています。架空の売上を計上する等の不正が発覚した場合は、こちらの基準により上場廃止になる可能性がありますので行わないようにしましょう。

仮装経理が発覚した場合のペナルティ

不正が発覚した場合は、企業には様々なペナルティが課せられます。例えば、仮装経理により税金を過大に納付していますが、本来の利益に基づく更生を請求する場合は、通常と同じように還付を受けられるのでしょうか。ここでは法人税と地方税の還付について解説していきます。

法人税の還付をすぐには受けられない

仮装経理が発覚すると、更正の請求を行い認められた場合でもすぐに還付を受け取ることはできません。過大に納付した税額を翌期以降5年間かけて税額から控除し、5年を超えた時点で控除できなかった税額については、その時点で還付を受けられることになります。

また特例として、更正の日を含む事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度分の法人税額等により加算された金額を控除した金額がある場合は、これに相当する額をまず還付するというものがあります。

地方税の還付をすぐには受けられない

地方税も法人税同様に、更正の請求を行い認められた場合でもすぐに還付を受け取ることはできません。過大に納付した税額を翌期以降5年間かけて税額から控除し、5年を超えた時点で控除できなかった税額については、その時点で還付を受けられることになります。こちらには法人税のような特例はありません。

修正経理の方法

過大申告が発覚した場合の更生の要件として、修正経理の実施があります。修正経理とは、過大計上を行った決算において、前期損益修正損または特別損失という形で修正する作業です。ここでは、修正経理の方法について詳しく見ていきましょう。

前期損益修正益(損)で処理する

前期の決算書は確定してしまっているため、当期の決算にて修正するための勘定科目です。過年度の損益にすべき事項を計上していきます。

また、前期で経常損益に計上すべき損益を、当期の経常損益に計上してしまうと、適切な当期の経常損益が反映されなくなるため、特別損益の区分として計上することを覚えておきましょう。

反対仕訳で修正する

誤った仕訳を完全に取り消したい場合に行われるのが反対仕訳です。誤った仕訳を取り消したら、本来の適切な仕訳を記帳し、誤った仕訳と適切な仕訳を合算します。これにより計上を相殺することができます。

雑損失等として修正する

雑損失とは、営業外費用に区分される経費の中で、ほかの勘定科目に分けることができない経費のことです。架空の売上を計上している場合は、期末残高となっている架空売掛債権をほかの損失と一括して処理を行います。

まとめ:仮装経理によるペナルティを理解して未然に防止しましょう

本記事では、仮装経理の内容やペナルティ、修正経理の方法について解説しました。経営状態を良く見せることで、株主からのプレッシャーを逃れたり、融資額をあげたりすることを目的に行われることが多いようですが、このような不正にはペナルティも存在します。

不適切な会計処理が発覚すれば、企業としての信頼を失い経営状態をより悪化させることに繋がりかねません。くれぐれも仮装経理は行わないようにしましょう。

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oneplus編集部

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