損金算入の対象をわかりやすく解説!メリット・デメリットも紹介

「損金算入」という言葉は、経費や税金についてのトピックでよく登場する言葉ですよね。

字面のイメージでなんとなくは理解しているつもりでも、いざ説明を求められると「あれ、意外と難しい…」と戸惑ってしまう方も多いのではないでしょうか。

このページでは、「そもそも損金とは?」というところから、損金算入の対象や、メリット・デメリットまで解説していきます。

目次

損金算入とは? そもそもの損金から損金経理まで順を追って解説

損金とは法人税の計算時に所得を減少させる金額

法人税は、その基準となる「所得(課税所得)」を算出し、これに適切な税率を乗じることで算出されます。そして、この「所得」は「益金-損金」で算出されます。

つまり、「損金」の額が大きいほど、「所得」の額が小さくなり、結果として法人税の額が小さくなるということ。なるべく法人税の支払額を減らしたいという会社の観点からは、損金は大きいほうが好ましいというわけです。

ここでポイントとなってくるのが、「損金」と「費用」の関係です。以下で詳しく見ていきましょう。

損金とする=「損金算入」|損金としない=「損金不算入」 

「損金」という言葉は税法上の概念であり、会計上の「費用」という言葉と対応します。

そして、対応はしているものの、これらが常に一致するとは限らないというのがポイントになってきます。会計上の「費用」は比較的柔軟な概念ですが、税法上の「損金」は画一的な概念です。

税法という一定の枠組みの中で、種々の「費用」を「損金」とするか否かを判定することで、納税者間の公平を保っているのです。

そして、費用を損金とすることを「損金算入」、損金としないことを「損金不算入」と言います。

損金経理とは確定決算において費用・損失となる会計処理  

「損金経理」は、法人税法第2条第25号において、「法人がその確定した決算において費用又は損失として経理することをいう」と定義されています。要するに、ある期の損金を当該決算期における決算書に費用・損失として表示することを「損金経理」と呼ぶのです。

減価償却費や貸倒損失等、いくつかの種類の費用が税務上の損金と認められるためには、損金経理をしていることが要件となっています。

これらの費用についてはあとで詳しく解説します。

損金算入するとどうなる?メリットとデメリット

損金算入のメリット:節税  

損金算入のメリットは、なんと言っても節税に繋がることです。「損金算入とは?」の段でも述べていますが、損金をより多く計上することで、その分課税所得が減少し、支払うべき法人税額が小さくなります。

そのため、節税を意識している会社においては、利益が大きくなった期はより多く損金算入しようというインセンティブが働くということになります。

しかし、その際用いられる典型的な費用には、会社の規模やその内訳ごとに制限が課されている場合が多い点に注意が必要です。

損金算入のデメリット:活用できる資金の減少 

損金算入にはデメリットもあります。いくら節税になるとはいっても、現金支出を伴う費用を多く計上すれば、その分キャッシュフローの悪化を招きます。

また、費用を多く計上すればするほど、会社の資産は減少しますので、企業価値の低下を招くでしょう。

究極的には、決算が赤字であれば法人税を支払う必要はありません。しかし、利益の獲得を目標として活動している以上、それでは本末転倒ですよね。節税も、適切な程度を見極めることが肝要です。

損金算入が可能な3つの対象

1.原価=製品を作るために必要な金額 

原価とは、会社で生産している製品を作るための材料費、労務費、経費のことです。製品を生産するためには原価の発生が不可避ですので、当然に損金算入が認められます。

2.費用=経営活動にかかった金額 

費用とは、会社が利益を獲得するための活動に必要とした金額を言います。

会社の業態に応じて様々な種類の費用が考えられますが、代表的なものは、販売する商品の仕入にかかる費用や、従業員の給料等の人件費、取引先を接待するための交際費等が挙げられます。

3.損失=失った資産価値・利益の金額  

損失とは、売掛金の貸倒れや、火災や災害による商品や建物の滅失等、会社が失った資産や利益の金額を言います。

損金経理をしなければ損金算入が認められない項目

損金経理の説明の際にも軽く触れたように、費用の中には、損金経理をしていなければ税法上の損金の額に算入することができないものがあります。

代表的な例として、減価償却費、繰延資産の償却費等が挙げられます。

これらの費用については、決算書に表示がないにも関わらず税務申告書類上のみで調整したり、税務調査の際等に過年度の費用を新たに損金として算入したりということができませんので、注意が必要です。

発生主義に基づいて複数年にわたって損金算入されていく項目

【減価償却】固定資産を取得するための支出   

減価償却とは、固定資産の取得に要した支出の額を、その効果が発揮される期間にわたって一定の方法で適切に配分することを目的とした会計処理です。減価償却をすることで、発生主義において求められる、費用と収益の対応関係を成立させることができます。

例えば、ある期に固定資産を100万円で取得した場合を考えます。この固定資産が、向こう5年間、一定の利益の獲得に資するとしましょう。

この時、取得に要した100万円は、20万円ずつ5年間にわたって費用とすることで、収益と費用を期間的に対応させることができます。これが減価償却の基本的な考え方です。

【繰延資産】収益に対して長期的に影響を与える支出 

繰延資産とは、支出であって、その支出を伴った期以降も、収益の獲得に影響を与えるものを指します。

会計上は限定列挙されており、現在は、以下の5つです。

  • 創立費
  • 開業費
  • 株式交付費
  • 社債発行費
  • 開発費

これらの本来の性質は費用です。しかし、その効果は長期にわたって発揮されると見込まれます。

そのため、固定資産における原価償却の場合と同様、費用と収益の対応関係を保つために、資産として計上したのち適当な方法で各期に配分されるのです。

損金算入に制限のある・損金算入が不可となる項目

【役員報酬】要件を満たす必要がある 

従業員に支払う給与であれば、基本的に損金算入されます。しかし、役員報酬を損金算入するためには、「定期同額給与」、「事前確定届出給与」、「業績連動給与」のいずれかの形式で支給する必要があります。

これらに該当しない形式での役員報酬を損金算入していた場合は、税務調査で指摘され、追徴課税が課される可能性があるので注意が必要です。

【評価損】災害等の理由の場合は算入可能 

評価損とは、会社が保有する資産の価値が減少した際に生じる損失を指します。その金額は、当該資産の帳簿価額と算定された実際の価値との差額です。基本的には損金算入することができない費用として扱われます。

しかし、例外的に、災害等一定の場合における評価損については損金算入することが認められます。

【寄付金】寄付先によって限度額が異なる

税務上、実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額を寄付金と言います。

寄付金の損金算入限度額はその寄付先によって異なり、具体的には以下の分類です。

  • 国や地方公共団体、その他財務大臣指定の団体であれば全額損金算入可能
  • 公益性や非営利性が認められる一定の団体の運営に充てられるものは、「特別損金算入限度額」の範囲内で損金算入可能
  • その他一般のものは「一般損金算入限度額」の範囲内で損金算入が可能

【交際費】条件・限度額が設定されている

交際費とは、事業に関連する相手方に対して、接待、饗応等の目的で支出する費用のことを言います。交際費は基本的に損金不算入とされています。

しかし、そのうち飲食費に関しては、

  • 一人あたり5,000円以下であれば全額損金算入可能
  • 上記以外の場合は50%以内の額が損金算入可能

という例外としての規定が設けられています。

また、中小企業であれば、年間で合計800万円以内の交際費は全額損金算入が可能です。

【貸倒損失】操作が容易のため厳しい条件あり

貸倒損失は、売掛金や貸付金等の債権が回収できなくなった場合に計上されます。回収できなくなったとの判断が会社の独断でなされると、損金の額が会社側で容易に操作できてしまいますよね。そのため、損金算入するためには厳しい条件が課されているのです。

「債権が回収できなくなった場合」に該当するケースの例としては以下の通りです。

  • 債権が法令により切り捨てられた場合
  • 第三者を含む協議で債権の全額が回収できないと明らかとなり、損金経理をした場合
  • 売上債権について取引停止後1年が経過した場合

租税公課とは税金や会費・罰金のこと|損金算入の可否

損金算入ができる主な租税公課   

租税公課のうち、主に事業を運営する上で必要なものが損金算入の対象となります。

これらはさらに、以下の通り分類されます。

  • 申告・納付した期の損金となる「申告納税方式」の租税公課(例:事業税、印紙税等)
  • 国や地方公共団体から支払額の通知を受けた期の損金となる「賦課決定方式」の租税公課(例:固定資産税、自動車税等)
  • 事業者を通じて間接的に納付することとなる「特別徴収方式」の租税公課(例:ゴルフ場利用税、入湯税)

損金不算入の扱いになる主な租税公課 

上記の租税公課と異なり、以下のものは損金不算入となります。

  • 法人税、地方法人税、都道府県民税および市町村民税の本税
    (元来は利益処分的な性質も求められているため、計算上の弊害が生じるため等、理由は諸説あります。)
  • 加算税や延滞税、罰金や科料等
    (罰則の性質があるものについて損金算入を認めると、その分税負担が軽減され、実質その租税公課の一部を国や地方公共団体が負担することになってしまうため。)

損金算入に関するQ&A

損金算入の仕訳方法は?

結論から述べると、損金算入・不算入は、仕訳には影響を与えません。損金経理という言葉も登場しましたが、これも普段と異なる仕訳を求めるものではありません。

実務においては、損益計算書における税引前当期純利益に税務申告書上で各項目に調整を施し課税所得を算出しますが、その際に損金算入・不算入を考慮します。

益金算入と損金算入の違いとは?

益金算入とは、企業会計上は収益として計上されないにも関わらず、法人税法上は益金として計上されるものです。具体的には、無償で取引を行った際、本来であれば収受が発生したはずの金額等が該当します。

益金算入には、損金算入とは逆に、課税所得を増大させ、支払うべき法人税の額を増加させる効果があります。

損金算入の意味やメリット・対象まとめ

損金算入について、正しいイメージを掴むことができたでしょうか。損金算入のメリットは節税効果にあり、その対象は様々でした。

細かい規定は数多く存在しますが、それらはご自身に関わる範囲に関係する部分のみ意識することができれば十分でしょう。

大切なポイントは、企業会計の視点と税務の視点が存在し、それらの目的の違いから、損金算入・不算入といった概念が発生していることです。各項目について、当記事がご理解の一助となれば幸いです。

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oneplus編集部

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