耐用年数とは? 法定耐用年数や減価償却について解説

「耐用年数や減価償却と聞くと苦手意識を持ってしまう。」

「いざ聞かれると正しく説明できる自信がない」

固定資産の耐用年数や、減価償却に対しこのような意識を持っている方も多いのではないでしょうか。

企業は建物、土地、車、事務所用の設備等様々な固定資産を有しています。これらの固定資産は、経理上で永久に価値を持ち続けるものではありません。そこで必要になる処理が決算時の減価償却であり、あわせて知っておかなければならないのが固定資産の「耐用年数」です。

今回は減価償却処理の際に必要な知識である耐用年数、そして減価償却の計算方法についてご説明します。

目次

経理で用いる言葉「耐用年数」とは? 耐久年数との違いも解説

耐用年数とは対象となる資産を使用できる期間のこと

企業が建物や土地、車両、パソコン等の備品を購入した場合は、会社は「固定資産」を取得したことになります。この固定資産の価値は年々減少していき最終的にその価値はなくなるのです。

このように、固定資産を取得してから、価値がなくなるまでの期間を「耐用年数」と言います。そして耐用年数は、固定資産の種類によって異なり、その年数は税法上で明確に規定されています。

減価償却費を算出するために耐用年数が必要

固定資産は年々その価値が減少していくことをご説明しました。減少した額は「資産」から「費用」へと振替えられ、費用計上されます。

このようにして費用として計上する金額を「減価償却費」と言います。

資産価値は毎年減少し、耐用年数の期間が終了するとその価値はなくなるように計算されます。

毎年減少する資産価値の価格は、耐用年数に依存するので減価償却費を求めるためには耐用年数は必要不可欠な情報です。

耐久年数との違いは?

耐用年数と混同しやすい言葉に「耐久年数」があります。

同じような意味で使われそうな言葉ですが、2つには明確な違いがあります。

経理担当者としては、正しい意味を知り適切に言葉を使い分けることが重要と言えるでしょう。

ここからは、耐用年数と耐久年数の意味の違いを解説します。

耐用年数は省令で定められている

耐用年数と耐久年数は、法律で定められているかどうかという点で大きく異なります。

耐用年数は、税法上で定められた固定資産としての価値を持つ年数です。

一方、耐久年数は製品等を開発したメーカーが独自に行った検証により定めた、商品を正常に使用できる年数のことを言います。言葉は似ていますが、意味は全く異なります。

経理担当者としては、意味の違いを理解して正しく使い分けることが大変重要です。

減価償却資産別の法定耐用年数を確認しよう

①建物:構造や使い道によって異なる

建物ひとつにしても、構造(木造・鉄筋コンクリート・木骨モルタル等)や建物の用途によって耐用年数は異なります。

まずは建物の耐用年数について、建物の構造や用途別にいくつか例をご紹介します。

構造:木造または合成樹脂造

建物の用途耐用年数
 事務所 24年
 店舗・住宅 22年
 飲食店 20年

構造:鉄骨鉄筋コンクリート・鉄筋コンクリート

建物の用途耐用年数
 事務所 50年
 住宅 47年
 店舗 39年

構造:木骨モルタル造

建物の用途耐用年数
 事務所 22年
 住宅・店舗 20年
 飲食店 19年

②建物付属設備:建物本体とは別に扱う

建物にかかる耐用年数で注意したいポイントは、建物本体と建物に付属する設備等は別の物と考えるということです。

そして、設備ごとに耐用年数が設定されています。

建物付属設備とその耐用年数の例は下記の通りです。

項目細目耐用年数
電気設備(照明設備含む) 蓄電池電源設備 6年
その他 15年
冷暖房、ボイラー設備、自動昇降設備 冷暖房器具 13年
エスカレーター 15年
エレベーター 17年

③構築物:用途または構造により判定する

建物に設置、取付けされた資産を指す建物付属設備とは違い、土地の上に建造されるものを構築物と呼びます。

構築物の耐用年数は、用途または素材・構造によって決められています。

下記は構築物の耐用年数の例です。

分類項目構造等耐用年数
鉄道業用、軌道業用に使用する設備 トンネル 鉄筋コンクリート造 60年
レンガ造 35年
その他 30年
信号機 30年
競技場、運動場、学校用 遊具(児童用) 滑り台、ブランコ、ジャングルジム等10年

④車両や運搬具:用途・排気量によって異なる

車両運搬具の耐用年数は、車両の種類や用途、排気量により決められています。

車両運搬具耐用年数の例は下記の通りです。

車両の種類細目耐用年数
自動車(二輪車、三輪車除く) 小型車 4年
二輪・三輪自動車 - 3年
自転車 - 2年
フォークリフト - 4年

⑤器具や備品:一部の器具・備品は構造と用途によって判定する


備品、設備の種類によっては用途や素材・構造により耐用年数が異なる物もあるので注意が必要です。

項目細目(構造・用途等)耐用年数
机、キャビネット 金属製 15年
その他 8年
電子計算機 パソコン 4年
その他 5年

⑥機械や装置:種類や用途により異なる

機械・装置は主に商品を製造するための設備等が該当し、その設備を使用する業種や用途によって耐用年数は異なります。

種類耐用年数
食料品製造業用の設備 10年
パルプ・紙・紙加工品製造用の設備 12年
ゴム製品製造業用の設備 9年

⑦ソフトウェア・ハードウェア:利用目的で異なる

ソフトウェアやハードウェアにも耐用年数があります。

これまでは、アプリケーションソフトは耐用年数が5年とされてきました。(区分は「無形原価償却資産」→「ソフトウェア」→「その他のもの」に該当)

しかし、最近では一概に判断が難しいソフトウェアやハードウェアも増えてきています。

耐用年数表に記載されている内容だけでは、どこに当てはまるのかの判断が難しいケースもありますので、まずは、何に使用するものなのか「用途」を明確にしましょう。

その上で、担当の税理士や管轄税務署へ相談することが大切です。

自社で耐用年数を適用する際のポイント

減価償却資産それぞれについて個別の使用価値を考慮する

耐用年数を判断する場合は、まずはその資産の材質、構造、使用する環境、そして使用する目的を明確にすることが重要です。同じ用途で使用する商品であっても、設置する場所や資産そのものの材質によって耐用年数が異なる場合があります。

また、全く同じ製品であったとしても、使用する場所や使用する企業の業種により耐用年数が変わるケースもあります。

したがって、資産そのものだけでなく、性質や使用状況等、きちんと把握することがひとつのポイントです。

貸与資産の場合は貸付先の用途で判断するのが一般的

減価償却資産を他社や他人へ貸与している場合の耐用年数の判断は、貸出し先での用途や使用場所、環境等で判断されます。

ただし、「貸与業用」とされている耐用年数表を参照している場合は例外です。資産を貸与している場合は、貸出先の情報も重要ですので、確実に把握しておくようにしましょう。

このように通常の処理とは異なる点があるので注意が必要です。

修繕すると新たな減価償却資産になることも

減価償却資産の修繕の耐用年数等の取り扱いはどのようになるのでしょうか。

処理方法は2つのパターンに分かれます。

まず、修繕費用が「資本的支出」なのかそれとも「修繕費」なのかを判断します。

資本的支出と修繕費それぞれの判断基準と処理方法は下記の通りです。

「資本的支出」
イメージとしてはバージョンアップです。
新しい機能の追加、性能のアップ、建物の場合は増改築等、修繕前よりその物の価値を上げ、使用できる期間も長くなるような修繕作業を指します。

(資本的支出の処理方法)
資本的支出に該当する場合は、資産を新たにもうひとつ取得したと判断されます。

「修繕費」
修繕費は機能回復のイメージです。資産の現状もつ価値・性能を維持するための保守、または破損等があった場合は、機能等を本来持つ機能に回復させるための修繕作業を行った分にかかる費用が修繕費に該当します。

(修繕費の処理方法)
修繕費後も減価償却資産の価値は変わらず、修繕による耐用年数もそのままです。
要するに、修繕費の場合は耐用年数や減価償却に影響はないと言えます。

減価償却の計算方法とは? 耐用年数をどのように用いる?

計算方法を知るために減価償却をおさらいしよう

固定資産の価値は年々減少していきます。

固定資産を取得した法人は、税務上で規定された耐用年数(固定資産が価値を有する期間)の間、毎期の決算ごとに固定資産の価値を減少させる減価償却を行います。

固定資産は減価償却をすることではじて経費として計上することができるのです。

減価償却費の計算方法は2種類

1.定額法

定額法は、固定資産の価値を毎年同じ額ずつ減少させる方法です。

例えば、耐用年数が5年、減価償却額が5万円の固定資産があった場合は、定額法では、5年をかけて、毎年5万円ずつ価値が減少していきます。

2.定率法

定率法は、毎年同じ割合で固定資産の価値が減少していくと考える方法です。

残された価値(残存価格)に減少率をかけて減価償却費を算出するので、定率法では年々減価償却費が減少していくのが特徴です。

耐用年数・減価償却に関するよくある疑問

中古資産の場合の耐用年数や減価償却方法は?

時には固定資産を中古で取得する場合もあるでしょう。

その時の耐用年数や減価償却の方法はどのようになるのでしょうか。

まず、中古で取得した固定資産は使用済みであり、価値の減少が既に発生していると言えます。したがって、通常の耐用年数をそのまま適用することは適当ではないと判断されることが多いでしょう。

その場合は、まず中古の資産を取得した時点であとどれくらいの期間使用できるかを見積もります。

そして、その年数を耐用年数として適用し減価償却を行うことができます。

耐用年数が終わった場合どう処理する?

耐用年数を終え、資産としての価値はなくなっても、固定資産をまだ有していることは変わらず帳簿上に残ります。帳簿上にある限りは、申告を行い課税対象となることを覚えておきましょう。

また、処分等を行った場合は減少資産の処理が必要になりますので、あわせて知っておくことが重要です。

耐用年数がわからない場合はどうする?

耐用年数は、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の別表第一、第二、第五および第六で定められているため、これに従って耐用年数を判断するようにしましょう。

また、国税庁がホームページで公開している「主な減価償却資産の耐用年数表」がよりわかりやすく一覧化されているので、参照するとよいでしょう。

その上でも判断が難しい場合は、管轄の税務署や担当の税理士さんにご相談することをおすすめします。

まとめ

今回は固定資産の耐用年数と減価償却について解説しました。

固定資産は減価償却によりはじめて費用計上することができます。そのためには、まず耐用年数の確認が不可欠です。

自社が取得した固定資産が耐用年数一覧のどの区分に該当するのかを判断し、耐用年数を確認、毎年の正しく減価償却を行っていくようにしましょう。

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oneplus編集部

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