見積書への押印は必要?法的効力や昨今進む押印廃止も解説

見積書はこれから契約する内容について取引先と同意する上で使用する重要な書類です。

テレワークが進む中で見積書に印を押さない企業も増えており、経理担当者の中には自社ではどのように対応するべきか迷われている方も多いのではないでしょうか。

今回の記事では見積書に押印が必要か説明しますので、参考にしてください。

目次

見積書とは?役割や必要性を解説

見積書は発注が行われる前に企業が発行する書類で、これから行われる取引の内容・数量・金額・期日等が記載され、企業間での確認に役立ちます。

まずはどんな役割を持つのかや、その必要性について説明します。

見積書役割:契約上の支払い条件を伝える重要な書類

見積書はその後の発注・納品・支払い等の前に発行される書類で、企業間の取引では最初に発行される書類となることが多く、取引の流れを決める重要な書類とも言えます。

不備等があると、取引先から信用を得られずその後の取引に繋がらない可能性もあるため注意が必要でしょう。

作成は法律上の義務とはされていませんが、発行することで企業間でのトラブルを削減できるため、積極的に使用する企業が多いです。

発注側と受注側の認識のズレをなくす

もし見積書を発行せず口頭や簡単なメールのみで内容を合意した場合は、思っていたよりも高額だったといったトラブルや行われた業務の内容が想定と違ったといったトラブルが起きやすくなってしまいます。

発注・受注の前に発行することで、 これから行われる取引について文書に残した形で双方の確認がとれ、 想定と違った場合には交渉や議論をするというプロセスを事前に踏め、トラブルの際には文書を確認できます。

発注側が他社と条件を比較する

見積書には一般的に取引内容や数量を金額等が明記されており、使用することで数量や金額等を他社との条件と容易に比べられて便利なため、取引先へのマナーや慣習として発行する企業が多いです。

発注側が複数の企業間で発注内容を比較することを、「相見積もりをとる」とも表現し、 相見積もりをとることで複数の企業の間で価格や内容を比較しながら、交渉し、自社にとって最適な相手先を選ぶことが可能になります。

見積書への押印は必要?押印する理由は?

経理担当者の中には押印が必要かや押し方を迷われている方も多いのではないでしょうか。押印は義務ではありませんが用いる企業が多いです。 今回はその理由や押し方についてもご説明します。

見積書の押印は義務ではない

見積書の押印は法律上は義務とはされておらず、押印がない場合でも正式な書類として使用され、 押印がある場合と同様の効力を持ちます。

また見積書の発行自体法律上の義務とはされておらず、書類なしに口頭やメールでの確認等でその後の取引や支払いを進めていくことも可能です。

そのため、個人事業主・フリーランスの方等は見積書や印を使用していない場合もありますが、規模が大きくなってくると多くの企業が使用しています。

押印の理由は安心感や信頼感のため

法律上は義務とはされていませんが、印鑑を押すことで取引先との間で安心感や信頼感を高めることができます。

見積書は取引を行うかどうか発注先が判断する上で重要な書類となることが多く、 企業によっては見積書を回覧する形で社内の稟議をまわす企業もあります。そのため、きちんとした形でないと社内決裁や担当者への印象が悪くなってしまう場合もあり、正式な書類であると示すためにも印鑑を押す企業が多いです。

見積書への押印は押印欄もしくは会社名の右側

印を押す際には押印欄を作成して押すか、会社名が表記されている箇所の右側に押すのが一般的です。

作成する際にはなるべくフォーマットを統一し、印を押す場所も決めておくとスムーズに作成ができ押し忘れしてしまうリスクを削減できるでしょう。

印鑑を押すためのスペースがない場合は、社名や担当者名に重なるように印を押すケースが多いです。文字に印鑑を重ねることで、印鑑の偽造を防いだり 社名と印鑑がセットであると示すことができます。

企業で用いる印鑑の種類・見積書の押印に適しているのは?

企業で用いる印鑑には様々な種類のものがありますが、見積書の作成には角印が適しています。 今回、確認が適している理由と企業で用いられるそのほかの印鑑について用途や特徴を詳しくご説明します。

「角印」が適している

角印とは四角い形をしている印鑑のことで、 社名や屋号等が彫られており社印として広く使われています。 四角い形をしているため中に書いてある文字が確認しやすく、 見積書や請求書等の証憑に使われることが多いです。

見積書にも角印を押すことで、書類に対する信頼感を高めトラブルや偽造の防止に役立てられます。 角印以外の印鑑も使用できますが、広く使われている印を使用することで、取引先にも違和感を与えずに取引を進められるでしょう。

企業で用いるそのほかの印鑑の種類3つ

企業で用いるそのほかのものとして、実印・ 銀行印・認印の3つがあります。

印鑑を複数種類持ち、書類の用途や重要度によってどの印鑑を使うか使い分けているケースが多く、担当者はどの印鑑が適切か都度判断する必要があります。

①法人においてもっとも重要な「実印」

実印は会社の登記時に使用するもので、企業にとって最も重要な資産の一つです。 

法人は法務局に印鑑を届け出ており 、重要な契約を行うときに押されるケースも多く、代表印とも呼ばれます。

重要な印鑑であるため、偽造を防ぐために真似のしにくい凝ったデザインにする企業も多いです。また、摩耗を防ぐために日常の取引等では実印は基本的には使いません。

丸い形をしているケースが多く、原則1企業につきひとつの印鑑しか発行できないとされます。

②実印より一回り小さい「銀行印」

銀行印は実印よりも一回り小さい丸型のものが多く、企業が銀行口座を開設したり、引き落とし口座の設定をしたりする際等に使用されます。

実印や認印と同じものを使うこともできますが、銀行は企業の資産を守る重要な役割を果たしますので、銀行印は別途作成し銀行関連のみに使うケースが多いです。 

銀行印も実印と同様に非常に重要なものですのでセキュリティ対策の観点から、真似がしにくい凝った文体やデザインとするとより安心でしょう。

③公的証明がされていない「認印」

認印は公的承認がされていないもので、ほかの印と比べると 重要度の低い場面や書類に使用されることが多いです。社内で書類を回して許可を取る場合や、荷物の受け取りの際等に使用されます。

発注して作成することもできますが、既製品のシャチハタを使っても問題ありません。認印を使うことで、実印や銀行印等の重要な印鑑の消耗や偽造を防げます。ただし見積書に認印を使うとフランクになりすぎてしまうため、角印を使うのがおすすめです。

実は押印なしの見積書でも法的効力は変わらない

法律上は見積書に印鑑を押すことは義務とされておらず、押されてない場合でも同様の効力を持ちます。

また、見積書の作成自体が法律上の義務とはなっていないため、作成しなくても法律上の問題はありません。 そのため、特に個人事業主やフリーランスの場合は、印鑑を使用せずに、口頭やメール等で内容を確認するケースも多く見られます。

ただし見積書を発行して印鑑を押すことで、企業に対する信頼感を高めトラブルの防止に役立つため、多くの企業で印付きの見積書が使われてきました。 印鑑を押していない場合でも、取引先とのやり取りにおいて今後の取引の内容を確認する重要な書類となるため、正しい内容で発行するのが重要です。 

最近では見積書の押印を廃止する企業や自治体も多い

印鑑を押すことで企業間での信頼性を高めるという効果はありますが、一方で印鑑の準備や捺印に手間がかかり出社が必要となるケースも多いため、最近では印鑑を押すことを廃止する企業や自治体も増えています。

廃止の理由はリモートワークの普及

コロナが始まった際には、印鑑を押す文化が経理部でリモートワークを推進できない原因となった企業も多かったようです。

コロナにより企業の方針としてリモートワークに切り替えるケースも多く、その対応のために押印を廃止する企業が増えています。

また。近年では新卒社員や転職者が企業に求める要件としてリモートワークの導入を条件にしているケースも多く、人材を確保する上でもリモートワークの普及が課題となっています。

「押印文化」にはどんな問題があった?

紙に印鑑を押す文化では、都度紙を印刷する必要があるため、ペーパーレス化が進まないという問題がありました。また、経理部員の出社が前提となってしまうという問題もコロナ禍で深刻なものとなりました。

ペーパーレス化が進まない要因に

押印を紙で行う場合は、印鑑を押す前に紙を印刷する必要があるため、仮に電子で書類の作成や受け取りを行った場合でも最終的には紙の形で処理・保管する流れとなってしまっていました。

紙はコストが掛かり環境負荷もあるため、ペーパーレスを進めたい企業が多く、 印鑑がその中で大きな問題となっていました。また、紙の保管にはスペースが必要なため、企業のオフィスを縮小する上でもペーパーレス化を進めたい企業が増えています。

押印するために出社する必要がある

紙に印鑑を押す際には、紙と印鑑を手元に用意する必要があるため、出社が前提とされてしまいます。上長に印鑑を押してもらうために出社して紙と印鑑を用意したり、上長として承認業務を行うために出社する必要がありました。

出社をしないようにしようとすると書類を郵送してもらったり自宅でプリントアウトする等の手間がかかってしまい、 結局その手間を削減するために出社してしまう方も多かったようです。

今後益々進むと予想される押印の廃止

デジタル化やコロナの状況により、ペーパーレス化やリモートワークの流れは今後も進んでいくと考えられ、 それに合わせて印鑑も廃止する行政や企業が増えていくと予想されます。

これまでは行政関連の書類で印鑑が必須とされていたため押していた企業も、行政のルールが変わることで印鑑を使う頻度が減っていくでしょう。また取引先で廃止の方針となったことに合わせて自社でも廃止する企業も増えると考えられます。

押印なしの見積書に不安がある場合は電子印鑑でも可能 

ペーパーレス化やテレワークの普及に伴い、紙に印を押すプロセスは廃止したい一方で、印のない見積書では不安が残るという方には電子印鑑の導入がおすすめです。電子印鑑を使えば紙や出社なしに印鑑を使用できます。

電子印鑑とはインターネット上で使える印鑑

電子印鑑を使用すれば、パソコンさえあれば印を押すことができます。 

具体的には 、普段使っている印鑑をPDFの形で取り込んでデジタル上で押すものや、デジタル上で印鑑を作成し使用するもの、経理関連のソフト上で都度印鑑を作成して使用するもの等があります。

電子印も通常の印鑑と同様に正式な印鑑として認められており、同様の効力を持つため、企業の経理処理プロセスとして電子印鑑の使用を認めている会社が増えています。

見積書などに電子印鑑を導入するメリットは?

電子印鑑を導入することでペーパーレス化や経理部のテレワークを推進できるだけでなく、会社全体でみた業務の効率化やコストの削減にも繋げることができます。今回は導入のメリットを詳しく説明します。

業務の効率化が図れる

電子化により印鑑を押すために紙を印刷したり出社する必要がなくなり、経理部の手間を大幅に削減できます。また見積書を作成しているのが営業部の場合は、営業部の方でも紙に印鑑を押したり経理部に物理的に回覧をする必要がなくなり、メリットがあるでしょう。

印を紙で押すプロセスだと、担当者や上長が休暇や出張等でオフィスに不在の場合に業務の流れが止まってしまいますが、電子化することで比較的スムーズに業務を進められるでしょう。

コストの削減に繋がる

電子化によって業務の効率化が図れることで書類作成にかかる人件費を削減し、よりコアな業務にリソースを当てることができます。また、プリントアウトの頻度が減ることで、紙代・郵送代のカットやプリンターのメンテナンス費の削減にも繋がります。

さらに証憑は数年にわたっての保管が義務付けられるため、紙の保管量が減ることで長い目で見ればオフィスの賃借料の削減や倉庫代の削減等にも繋がっていく可能性があります。

電子印鑑を使用する場合は取引先への確認が必要

電子印鑑は法律上認められていますが、取引先によっては使用が進んでおらず、紙以外認めていないケースもあります。そのため、新しい取引先とは電子印鑑が使用できるか事前に確認しておくと安心です。

もし取引先で導入が進んでいない場合は、効力が法的には変わらないことやプロセスの効率化・ペーパーレス化といったメリットがあることを伝え、取引先でも電子印鑑の導入が進むように説明できるとより親切でしょう。

まとめ:見積書への押印は電子印鑑でも可能

見積書に印鑑を押すことは法律上の義務ではありませんが 、 取引先からの信頼を高めることができるため、マナーとして 印を押すプロセスを踏むと良いでしょう。

テレワークやペーパーレスの流れの中で、出社して印を押すことが難しくなっている場合は、電子印鑑の導入がおすすめです。 電子印鑑を導入することで、印刷や保管等紙にかかるコストを削減でき、業務の効率化にも繋がるため、経理担当者や経営者は自社の経理プロセスの中に取り入れてみてはいかがでしょうか。

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oneplus編集部

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