配賦の意味とは?読み方や配賦基準の設定方法、種類を解説

原価や利益を計算し、コストをそれぞれの部署で正しく把握する上で重要な手段となる配賦。全社にまたがる費用を各部署に負担させ、全社でコストに対する意識を高めていくことができます。

今回、その概念から手順やポイントまで詳しくご説明しています。経営者や経理担当者の方は是非参考にしていただけたら嬉しいです。

目次

配賦の意味とは? 読み方や按分・賦課・配分との違いを解説

按分基準に合わせてコストを各所に分けること。
配賦基準に合わせて按分されたコストを各所に配ること。
配分振り分けて配ること。

配賦(はいふ)とは一定の基準で費用を分配すること

複数の部門でかかるコストを部門に配ることを指します。各所に「配る」ことから、配賦と呼ばれます。

本社の管理部門の費用や複数の部署で働く人の人件費は、どの部署がどれだけ負担するのか曖昧になりがちです。

配賦によって、各部署のコストを明確にでき、利益に対する意識を高められます。原価計算においてもよく用いられる方法です。

配賦の際には、事前に一定の基準を設けてその基準に沿って振り分けていきます。

基準の設定方法は後述するので、そちらも参考にしてください。

【配賦と按分の違い】配賦は「配る」・按分は「分ける」

似た意味を持ち混同されることも多いですが、配賦は「配る」という意味の言葉、按分は「分ける」という意味の言葉です。

按分は様々な文脈で使われますが、配賦は原価計算で使われる言葉です。

原価計算の場合は、按分は基準に応じて分けることを示し、配賦はそのコストを各部署に負担させることを示します。作業時間や工数といった基準に応じて按分した費用を、部署や製品に振り分けるという手順です。

【配賦と賦課の違い】賦課とは租税等を割当て負担させること

配賦とは、設定した基準に従って、費用を部署に負担させることです。

一方で、賦課とは税金等を振り分けることを示す言葉です。

配賦は設定した基準に従って費用を振り分けることを示し、第三者からの強制力は原則持ちません。一方で賦課は税金の支払い義務という強制力の意味を持ちます。

賦課は税金に使われる言葉です。そのため、「配賦」の概念をさらに細かく見て税金に絞ったものを「賦課」と呼ぶとも言えるでしょう。

【配賦と配分の違い】配分には経理上異なる定義がある

配賦はある基準に従って振り分けたコストを各部署・各製品に配ることを示します。

一方で、配分は振り分けて配ること・分配することを示します。

配賦は主に原価計算で使われ、複数の部門にまたがって発生する費用を各々の部署に振り分ける効果があります。

一方で、配分は経理に限らず広く使われる用語です。配分が経理で使われる場合は、費用を今年と来年で分けたり、減価償却を特定の期間に渡って分けることを示します。

配賦の目的は大きく分けて2つある

①費用負担を平等にするため

複数の部署や商品にまたがる費用の平等な負担が大きな目的です。

例えば社員のAさんがX事業部とY事業部を兼任しているとします。

この場合は、ひとつの事業部だけに人件費をつけると負担が不平等になってしまいます。Aさんが業務にかけている時間を使って、X事業部とY事業部に人件費を振り分けることで納得感のある負担となります。

その他の例として、商品Oと商品Pが同じ製造ラインで製造されているとします。

この場合は、生産量や工場のラインを動かした時間等でコストを分けて商品Oと商品Pにそれぞれつけることで対等な負担にできるでしょう。

②企業の利益を意識させるため

費用を分担することで、社員に企業の利益を意識させられます。

特に、管理部門の人件費や本社にかかる費用を正しく負担させることが大切です。

配賦前にはそれぞれの事業部単位で利益が出ているように見えても、管理分や本社分を配賦すると赤字になっているというケースもよくあります。

配賦を正しく行うことで、各事業部だけでなく企業全体として利益が出ているのかを意識させることができるでしょう。これにより、各事業部がより高い目線で経営数字を管理できます。

配賦を利用する意味は?メリットデメリットを紹介

配賦のメリット:経費のコスト削減に繋がる

メリットとして、経費のコスト削減に繋がるということが挙げられます。

配賦を適切に行うことで、それぞれの部門で利益を正しく理解できるようになるでしょう。また、本社の管理部門の費用や本社にかかる費用も分けることで、各事業部で利益がでているのかより厳しい視点で確認できるようになります。

さらに、基準を事前に決めることで、どの部門がどの費用を分担するのか意識を合わせられるでしょう。すり合わせの段階で、全社で不要なコストが見つかるケースや、より適切な分け方が見つかるケースもあります。

配賦のデメリット:平等な基準設定が難しい

デメリットとして、平等な基準設定が難しいということが挙げられます。

工数・人数・事業規模等何かしらの数字を使って基準を設定しておく必要がありますが、全社的に納得感を持てる基準を定めるのが難しいです。

例えば本社の経理部門の人件費を、各部署に配賦するケースを考えます。

この時、すべての事業部に同額で振り分けると規模の小さい事業部は損をしているように感じるかもしれません。

設定に当たっては、全社でよく話し合いなるべく全員が納得のいく基準を設定することが大切です。また、他社の事例も参考にすると良いでしょう。

配賦基準の設定方法とは?大きく2つの方法がある

1.部門別配賦=間接部門の費用を直接部門に振り分ける方法

部門別配賦とは、間接部門でかかる費用を部門に直接振り分ける方法です。

一般的に間接部門とは経理・総務・人事といったバックオフィスのことを指します。間接部門で発生した費用を、製造・営業といった事業部に振り分ける方法です。配賦に当たっては、事前に自社の状況に応じて定められた一定の基準に従います。

費用を振り分ける方法には様々なものがありますが、代表的な3つについてそれぞれ詳しくご説明します。

直接配賦法=すべて直接部門に振り分ける方法

費用を直接部門に一度に振り分ける方法が直接配賦法です。このとき、間接部門間での配賦は行いません。補助部門間でのやりとりを無視して、一括で製造部門に振り分けます。

計算が簡単で、迅速に正確に計算をできるという利点があります。一方で、補助部門同士での取引を計算上無視するため、細かな実態を把握できないことが難点です。

階梯式配賦法=優先順位をつけて直接部門に配賦する方法

間接部門の中で優先順位をつけて、優先度の高い部門から順に費用を振り分ける方法で、優先度の低い部門は振り分けが少なくなります。

優先順位をつけるにあたっては、まずはほかの補助部門に対して役務提供数の多い補助部門を優先します。提供数が同じ場合は、金額が大きい部門を優先します。

計算が複雑になるというデメリットがありますが、直接配賦法よりも実態を表しやすくなります。

相互配賦法=二段階で直接部門に配賦する方法

相互配賦方は、二つの段階に分けて部門に配賦していく方法です。

一段階目ではほかの補助部門にもコストを配賦しますが、二段階目ではほかの補助部門は無視して製造部門のみに配賦します。二段階目は直接配賦法と同じ方法です。

直接配賦法と比べて計算は難しいですが、2段階に分けることでより緻密に正確にコストを配賦できます。

2.製品別配賦=直接振り分けられない費用を配賦する方法

部門に直接振り分けられないコストを製品に配賦する方法が製品別配賦です。製品別利益の把握を重視している企業でよく用いられる方法です。

具体的な配賦対象としては、製品全体の製造にかかっている人件費・光熱費・製造費等が挙げられます。

配賦の際には、人員数・工程数・製造ラインの稼働時間・生産量等を元に基準を設定します。基準に基づいて各製品に配賦するため、部門別での振り分けが不要という利点があります。また、製品ごとに費用を振り分けることで、製品別の利益をより把握しやすくなるのも特徴です。

配賦基準の設定から計算までの具体的な流れ

①企業ごとに適切な配賦基準を設定する

まずは企業ごとに適切な配賦基準を設定します。

基準としては、売上高・生産量・工程数・稼働時間・材料費等が考えられるでしょう。

業界や企業によって適切な配賦基準は異なるため、自社の状況に応じて最適なものを選ぶのが重要です。また、複雑にしすぎてしまうとその後の計算が難しくなってしまうため、必要な要素のみを選び出すと良いでしょう。

また、部門によって賦課額に差が出る場合には特に注意が必要です。負担の多い部署が不満を持ちやすいためです。差が出る場合には納得のいく理由を用意し丁寧な説明をするよう心がけましょう。

②配賦率(各部署ごとに費用負担の割合)を計算する

設定した配賦基準に基づいて配賦率を計算します。

例えば売上高を基準にする場合を考えます。

全社での売上が1000万円で、A部門500万円・B部門300万円・C部門200万円だったとします。この場合は、A部門50%・B部門30%・C部門20%の負担率です。

次に稼働時間を基準にする場合を考えます。

全社での稼働が100時間でA部門40時間・B部門30時間・C部門30時間だったとします。この場合は、A部門40%・B部門30%・C部門30%の負担率です。

このように、配賦基準に基づいて配賦率が決定できます。

③配賦額(各部署が負担する金額)を計算する

配賦基準を元に配賦率が確定したら、配賦額を計算します。

コストに対して配賦率を掛け算することで、配賦額を求めることができます。

例えば上述の配賦率に基づいて、「管理部の人件費500万円」を配賦する場合を考えます。

売上高を基準にしている場合は、A部門50%・B部門30%・C部門20%となっていました。

この場合の人件費の負担は、A部門250万円・B部門150万円・C部門100万円です。

稼働時間を基準にしている場合は、A部門40%・B部門30%・C部門30%となっていました。

この場合の人件費の負担は、A部門200万円・B部門150万円・C部門150万円です。

配賦は企業規模が大きくなったタイミングで導入することが多い

配賦を行うべきかどうかについて明確な基準はありませんが、部門数や製品数が増えてきた場合に特に有効です。配賦することで、部門別や製品別の利益を正確に把握することができるからです。

経理や人事といった管理部門は、配賦を行わないと不採算部門に見えてしまいます。

配賦をすることで、必要な経費という意識を全社で持つことができるでしょう。

大企業に限らず、中小企業でもある程度企業規模が大きくなったタイミングで導入を検討することが多いです。部門数や製品数が増えてきた段階で早めに導入を検討しはじめると良いでしょう。

まとめ

配賦を行うことで、全社にまたがるコストを各部署に適切に負担させることができます。

利益がでているのかをより厳しい基準で精査できるようになるため、利益に対する意識を向上させることができるでしょう。

配賦を行う上では、全社にとって納得感のある基準を設定して社員に丁寧に説明していくことが大切です。基準を設定して配賦していく中で、そのコストが本当に必要なのかといった議論もできると良いでしょう。

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oneplus編集部

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