管理会計・財務会計とは? 目的や機能の違いを解説

普段何気なく行っている経理・会計業務ですが、実は2種類に分類できるのを知っている方は少ないのではないでしょうか。

今回の記事では、

  • 「管理会計」「財務会計」それぞれの目的や機能とは何か
  • 「管理会計」「財務会計」の違い
  • 管理会計を導入することのメリット

等について、お伝えしていきます。

企業会計は「管理会計」と「財務会計」の2つに分けられる

企業会計とは「企業が行う会計」を意味しますが、さらに使用目的の違いによって「管理会計」と「財務会計」の2つに分けられます。

2つの違いは「誰に向けて活用する会計なのか?」という点です。

管理会計は「自社で経営に重要な指標を評価するために使う会計」です。一方、財務会計は「金融機関等の社外の関係者に経営状況を伝えるための会計」を意味します。

管理会計とは? 目的や機能を解説

管理会計は会社を管理するための会計

管理会計とは、自社を良い方向に管理していくための会計です。

会社経営にとって数値管理は欠かせませんが、どの数値が経営にとって重要であるかは業種や企業によって異なるでしょう。「売上」を重視する企業もあれば、「原価率」や「利益率」を経営の肝と考える企業もあるからです。

また管理会計は自社内で活用するものなので、必ずしも取り入れなければいけないものではありません。管理会計を経営に活かすために活用するかどうかは、企業次第なのです。

管理会計の目的:経営者への情報提供

管理会計の目的は、経営者が経営を行っていく上で重要な情報を提供していくことです。それは企業全体の情報かもしれませんし、部署ごとかもしれません。また月次の情報が必要な時もあれば、日次情報を求められることもあるでしょう。一口に管理会計と言っても、企業ごとはもちろん、その時々で必要とされる情報が変化します。

一般的には、事業計画策定時や経営会議を行う際に必要となる場合が多いでしょう。

管理会計の2種類の管理

1.予算管理:予算と実績を分析して改善を図る

予算管理とは、以下のステップを繰り返し行っていくことです。

  • 予算(計画)を立てること
  • 計画を実行し、予算と実績の差異が生じた原因を考える
  • 考察を元に予算を練り直し、その予算に基づいて行動していく

上記を繰り返していくことを「PDCAサイクル」と呼ぶこともあります。

また中長期(3〜5年)で予算を作成して年次で実績評価をしていく場合もあれば、年間予算を立てて月次で評価していく場合もあるでしょう。

「予算を立てるだけではなく実行し、さらに予算と実績の管理を行う」というすべてが揃うことが重要です。

2.原価管理:原価目標と実際の原価を比べて改善を図る

原価管理とは、原価の目標数値を設定し、実際にかかった原価と比較して改善していくことです。主に製造業を営む企業が、行うことが多いのではないでしょうか。

予算管理同様に、目標を立てるだけではなく実績と比較しなくてはいけません。うまく行った場合も逆の場合も、その要因を探ることが重要だからです。考察をもとに再度原価を設定し直し、実行を繰り返していくことで適正な原価を探っていけるでしょう。

財務会計とは? 目的や機能を解説

財務会計は外部に報告するための会計

財務会計とは、自社以外の外部関係者に経営状況を伝えるために行う会計を意味します。外部関係者とは、例えば取引のある金融機関や税務署等です。

なお、管理会計とは異なり外部に報告するための資料なので、自社の都合で作成してよいわけではありません。会計基準に則った決算報告書を作成しなければいけないのです。

財務会計の目的:外部への財政状況と経営成績の開示

外部への報告に必要な決算報告書には、大きく下記3つの資料が含まれます。

  • 損益計算書

    企業が定めている決算月に基づいた事業年度内で、どれだけの売上・利益を出すことができたのか、年間を通しての経営成績を示す資料。

  • 貸借対照表

    決算日時点で企業が保有している資産(主に現金化できるもの)、負債(支払いするべきもの)、純資産(主に資本金)を示す資料。

  • キャッシュフロー計算書

    現預金の入金と出金に着目し、企業がどのように資金繰りを行っているのか、そして期末時点でいくら現預金が残っているのかを示す資料。
    なお、キャッシュフロー計算書は上場企業には開示義務がありますが、中小企業は作成しなくても問題ありません。

財務会計が果たす2つの機能

財務会計の機能1.情報提供機能

財務会計は企業の経営状況を表すため、社外の利害関係者にとって有益な情報となります。例えば、投資家や金融機関です。投資家は財務諸表から様々な観点で分析を行い、投資に値する企業かどうかを判断するでしょう。

また金融機関も財務諸表から企業の経営状況を調査し、融資の際には「事業の収益性はどうか」「返済能力があるか」「将来性はあるか」等を判断しています。

財務会計の機能2.利害調整機能

財務会計には、利害関係者間の利害を調整する機能もあります。主要な例を2つ紹介します。

  • 株主と経営者

    株主は投資した分を配当によってリターンを得ることを期待しています。しかし企業に投資されたお金を、例えば経営者自身の報酬を上げるために使用してしまう可能性はゼロではありません。財務諸表を開示することで、投資家は適切にお金が使われているかをチェックすることが可能になるのです。

  • 株主と金融機関

    もし企業への融資を行っている場合は、金融機関は返済をしてもらわなければいけません。一方で、株主は多くの配当を求めています。高い配当を歓迎する株主と利益を内部留保することを歓迎する金融機関の立場は相反するものです。
    金融機関への返済能力を保持しつつ、適切な配当金のルールを定め、配当可能額を判断するために財務諸表を活用します。

管理会計と財務会計の違いをわかりやすく解説

まずは管理会計と財務会計の違いをまとめた下表をご覧ください。

管理会計財務会計
利用する人 社内 社外
扱う情報 将来の予測 過去の実績
会計をする義務 なし あり
記載内容やフォーマット 決められていない 決められている
会計を行う時期 任意 定められた会計期間

会計の利用者が社内か社外か

管理会計は、自社の今後の経営に活かせる情報を提供するのが目的です。よって、利用者は経営者等のマネジメントを行う人になります。一方、財務会計は株主や金融機関等、社外の関係者に情報提供を行うのが目的です。法律に則って財務諸表の作成を行い、自社の経営状況を開示します。

集計する会計が過去の実績か将来の予測か

管理会計は今後の事業計画作成等、視点が未来の予測に向いています。一方、財務会計は過去に行われた取引を集計し、一定期間内での経営成績や財務状況を表すものです。

会計をする義務の有無

管理会計は法律で提出を求められているわけではないので、行うタイミングや期間等は企業の任意です。一方、財務会計は一般的にすべての企業に義務付けられているので、毎期行うことが定められています。

作成する書類の内容やフォーマット

管理会計は社内で用いる情報なので、内容やフォーマットに定めはありません。自社の経営に役立つ分析や予測を、好きな形で共有可能です。一方、財務会計は会計基準に則った内容・フォーマットで財務諸表の作成を行わなければいけません。

会計を行う時期

管理会計は、行うべき時期は定められていません。各企業内で必要になったタイミングで、行うことが可能です。一方、財務会計は決算月の翌月から2か月以内に行わなければいけません。財務諸表を作成し、税務署に提出する必要があるからです。

義務化されていない管理会計も導入するべき

管理会計は義務化されているわけではないので、行うかどうかは企業の自由です。しかし管理会計を行うことで、自社経営に重要な指標を過去実績と比較して分析を行うこともできます。また今後の目標を数値化してみる等、自社に合った使い方ができるのです。事業を末永く継続していくためにも、是非導入してみましょう。

次の章で、管理会計を導入するメリットを紹介していきます。

管理会計を導入するメリット5選

①企業の業績を管理しやすくなる

管理会計の導入で目標予算を設定することで、その時々でどれくらいの達成率で進んでいるのか把握することが可能になります。業績が良いのか悪いのか、管理しやすくなるのです。予算は売上だけではなく経費でも作成できるので、部署に関係なく用いることができるでしょう。

②評価を公正・公平にできる

管理会計を用いて数値化することで、個人や部署がどれくらいの達成率なのか客観的に判断することができます。評価する側もされる側も、評価のポイントがハッキリするでしょう。そのため、例えば上司個人の主観ではなく、公正・公平に評価が可能になります。

③各部門の担当者の経営意識が高まる

管理会計を導入することで、例えば部署ごとや個人での目標予算の作成が行えるでしょう。目標数字が設定されることで「現在の進捗率」や「達成するために何を行うべきか」について、自主的に考える必要が出てきます。これはすなわち、担当者の経営意識の醸成にも繋げることができるのです。

④経営戦略に役立てられる

管理会計の導入によって「部署ごと」「商品・サービスごと」等、自社に合った数値を把握することで今後の経営戦略に役立てられるでしょう。売上、経費、利益を予算管理することで、その時々に必要な手を打ちやすくなります。

⑤スピードアップやコストの削減に繋がる

管理会計を導入し、日次決算を行った場合について考えましょう。例えば売上は利益目標を設定すると、日々の集計によって進捗度をリアルタイムで把握することができます。達成度合いが低ければすぐにアクションを取れますし、スピード感のある経営が行えるでしょう。

また経費の予算も作成することで、目標達成の意識が社内に芽生えてきます。その結果、会社全体としてコスト削減にも繋がっていくでしょう。

管理会計を導入し業績が回復した企業事例

管理会計を導入することで、業績を回復できた企業事例をひとつ紹介します。

その企業は食品の製造販売を行っていましたが、売上は半分以下になり、保有資産も金融機関に担保として取られてしまうまで経営は悪化しました。

原因を探ってみると、店舗ごとの売上や利益を把握していないことがわかったのです。そこで管理会計を導入し、店舗ごとに「1か月」「1週間」「1日」の売上・利益目標を設定しました。また目標達成に必要な指標を設定し、各店舗の数値を把握していくようにしたのです。

その結果、以下のような効果が現れました。

  • 不採算店舗を把握することができ、閉店という判断が可能になった
  • 数値目標が設定されることで評価が公正になり、社員からの不平不満がなくなった
  • 各店舗の店長が目標達成するためにはどうするべきか考えて、切磋琢磨するようになった

その後、売上を1.5倍以上に伸ばすことができ、保有資産を担保から外せる見込みも出てきたのです。

まとめ

今回の記事では「管理会計」と「財務会計」の違い、それぞれの目的や会社経営にどのように機能しているのか等をお伝えしてきました。

  • 管理会計は社内で活用する会計で、自社に合った経営数値の設定・分析を行うことで企業経営に役立たせていく目的で行われる。行うかどうかは企業の任意。
  • 財務会計は株主や金融機関等、外部の関係先に自社の経営状況を開示するため、財務諸表の作成という形で毎期行わなければいけない。
  • 管理会計の導入は「業績把握」「公正な評価」「素早い経営判断」等に繋がる。

もし管理会計を経営に取り入れていないようであれば、まずは売上や利益の目標設定等、できる範囲から導入してみてはいかがでしょうか。

この記事を読んだ方で「受け取る」納品書や請求書を「電子化」することに興味がある方はいませんか?

oneplatは、納品書や請求書をデータで受け取れるサービスです。

会社組織の財務・経理部門や、支店・店舗・工場などの、 管理業務における下記の課題解決にoneplatは大きく貢献できます。

  • 会計/販売管理システムとの連携で仕訳入力が不要に
  • 取りまとめたデータを自動で取り込み
  • 総合振込データの作成や仕訳の消込も自動入力

導入後は複雑なデータ入力業務に時間を奪われることなく、本来の業務へ時間とコストを割くことが可能です。

このウェブサイトでは、他にもコスト削減・業務効率化に役立つ資料を無料で配布しておりますので、 是非、この機会に一度資料ダウンロードをしてみください。

oneplus編集部

この記事の執筆者

最短5分

財務・経理部門における
DXのお問い合わせやご相談についてはこちら

お役立ち資料はこちら