ERPシステムとは? 基幹システムとの違いやメリットデメリットをわかりやすく解説

会社経営には様々なデータ管理が求められ「部署ごとで管理ソフトを使用して業務を行っている」という会社が多いのではないでしょうか。

そのため

  • システム間の連携が取れず、業務に費やす人や時間が増えてしまう
  • リアルタイムに会社の経営状態を把握できず、意思決定が遅れてしまう

等の問題が起こってしまいます。

その問題を解決するため「ERPシステムの導入」を検討している人に向けて

  • ERPシステムとは、どのようなシステムなのか
  • 現在使用しているシステムと違いはあるのか
  • 導入のメリットやデメリットは何か

をわかりやすく解説いたします。

目次

業務を統合的に管理できるというERPシステムとは?

ERPシステムを「ERP」という考え方の由来から詳しく解説

ERPとは「エンタープライズ(企業:Enterprise)・リソース(資源:Resource)・プランニング(計画:Planning)」を略したもので「企業の経営資源」を有効活用しようとする考え方のことを指します。

「企業の経営資源」とは企業が成長・安定する上で利用できる能力すべてのことをいい、その中でもヒト、モノ、カネ、情報が「四大経営資源」です。

  • ヒト
    会社に関わるすべての人のことをいい、経営にとって重要な資源です。その人達が優秀であればあるほど、企業の人的資源は豊かになると言えます。
  • モノ
    会社が所有するすべての物のことをいいます。経営をする上で物がたくさんあれば生産効率が上がっていきますが、コストのことを考えて運用することが大切です。
  • カネ
    現金や預金だけでなく、債権や株式等も含まれます。お金が豊富にあれば、優秀な人材や良い設備等が獲得できるため、経営しやすくなりますが、限られたお金をどのように活かすのかを考えることが重要です。
  • 情報
    企業の「無形財産」のことをいい、ノウハウや技術、特許や著作権、顧客のデータ等が該当します。会社の利益を大きくする可能性がありますので、慎重に扱うことが大切です。

ERPは「経営資源を有効活用しようという考え方」ですが、ERPシステムは基幹業務(生産や販売、会計や人事等、企業の経営に欠かせない業務)を統合し、効率化や情報の一元化を図るシステムのことをいいます。

ERPシステムの構成を図を使ってわかりやすく解説

ERPシステムは販売、生産、会計等の基幹業務システムで構成されています。

  • 販売管理…受注・発注処理、出荷・入荷処理、仕入・売上処理等、販売に関わる業務を管理
  • 生産管理…基準生産計画、資材所要量計算、工程・進捗等、生産に関わる業務を管理
  • 原価管理…実績収集、目標原価計算、実績原価計算、予定原価計算、標準原価計算等、原価に関わる業務を管理
  • 財務会計管理…部門別予算、キャッシュ・フロー、資金繰り、管理会計等、財務や会計に関わる業務を管理
  • 債権債務管理…請求、回収、支払い等、債権や債務に関わる業務を管理

これらの情報をまとめて管理するための機能が備わっており、一連の流れで繋がっているため、あらゆる情報を把握することができます。

ERPパッケージとの違いは?

先ほど解説しました「ERPシステム」ですが、似ている言葉で「ERPパッケージ」というものがあります。
「ERPパッケージ」はERPを実践していく上で最適なシステムが、あらかじめパッケージ化されたものです。

ERPパッケージについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
>>ERPパッケージとは? 特徴や機能、導入後に得られる効果を解説

ERPシステムと同じく業務効率を左右する基幹システムとの違い

基幹システムは企業の根幹となるシステム

基幹システムは「業務システム」とも呼ばれ、企業にとって重要な経営資源であるヒト、モノ、カネの情報を管理するシステムのことです。

主に下記のシステムが代表的と言えます。

  • 生産管理システム
  • 購買管理システム
  • 在庫管理システム
  • 販売管理システム
  • 勤怠管理システム
  • 財務会計システム

これらのシステムが停止すると、企業活動まで停止してしまうので、企業の根幹となる重要なシステムなのです。

ERPシステムは基幹システムを一元化したもの

基幹システムは業務ごとにそれぞれ独立しているため、他部署との連携が取れません。
そのため、必要な情報が他部署のシステムにある場合、情報を得るための時間や労力がかかってしまいます。

一方、ERPシステムは基幹システムを一元化したものですので、他部署を介さなくても必要な情報をすぐに得ることができ、業務の効率化やコスト削減にもつながるのです。

ERPシステムは大きく2種類・それぞれのメリット・デメリット

ERPシステムは大きく分けて「クラウド型ERP」と「オンプレミス型ERP」の2種類があります。

クラウド型ERPオンプレミス型ERP
ハードウェア運用方法クラウド事業者が設置・管理自社で設置・管理
初期費用安価高額
月額費用利用数により変動運用する上で費用が発生
導入期間アカウント登録後すぐ数週間から数カ月
カスタマイズ自由度が低い自由度が高い
セキュリティクラウド事業者が管理・運用自社で管理・運用

クラウド型ERP:安価で済むがセキュリティの信頼性が課題

クラウド事業者が構築したシステムを使用するのが、クラウド型ERPです。
利用数やオプション等によって費用はかかりますが、ハードウェアやサーバー等導入にかかる費用が不要ですので、オンプレミス型ERPに比べて費用を抑えることができます。
また、アカウントを登録すればすぐに使用できるため、導入しやすいと言えるでしょう。

クラウド型ERPは、インターネットに接続していれば時間と場所に関係なくアクセスができるため、セキュリティの信頼性が課題と言えます。

オンプレミス型ERP:カスタマイズしやすいが高額になりがち

自社にサーバー等の設備やシステムを設置し、使用するのがオンプレミス型ERPです。
自社で所有するため、クラウド型ERPに比べて自由にカスタマイズや増強を行うことができます。
また、社内のみの接続に限られますので、アクセスした人を特定しやすくなります。

オンプレミス型ERPは、初期費用が高額になりがちで、システムの構築等導入までに時間がかかってしまうため、すぐに使用することができません。

ERPシステム連携で得られる3つのメリット

①あらゆる情報の一括管理が可能になる

企業には営業の情報や販売の情報、経理・財務の情報等あらゆる情報があります。
部署や業務別に専用の基幹システムを導入して管理していると、情報更新のタイミングが違う等の理由で、最新の情報に修正する作業が必要になってしまうのです。

ERPシステムでは情報を一元化することにより、多くの部署で共有することができますので、修正作業を行うことなく最新の情報を一括管理することができます。

②企業の内部統制強化が図れる

内部統制とは企業運営を健全に行う、すなわち不正やミスを防止するための仕組みやルールを構築し、管理・運用をすることです。

例えば、会社で使用する物を購入する際に「税込み1万円を超える場合は稟議書を提出し、社長の決済が必要」というルールを定めていないと、会社で必要な物を購入しているのか、私用で使うために購入しているのかわからず、社長が「知らないうちに多くの経費が使われていた」ということにもなります。
その結果、収支よりも支出の方が増え、会社が倒産することにもなりかねません。

また、違う部署で同じ業務をすることがあれば、時間と労力が無駄になってしまいます。

ERPシステムでは情報を一元管理しますので「誰が何を購入したのか」「他部署と同じ業務をしている」等が把握でき、コスト削減や業務の負担軽減、不正防止のために欠かせない内部統制が強化できるのです。

③経営状況の把握が迅速になり早く的確な判断につながる

ERPシステムを導入すると、売上や在庫のデータ、営業の実績等の経営に必要な情報が集約されますので、経営状況の把握が迅速になります。

また、ERPシステム内にはデータが蓄積されていますので、瞬時に集計や分析をすることができます。今までデータの集計や分析にかかっていた時間の短縮や的確な判断に繋がるのです。

ERPシステム連携の3つのデメリット

①初期費用・ランニングコストが高額になる可能性ある

ERPシステムには「クラウド型ERP」「オンプレミス型ERP」の2種類があるとお伝えしました。

初期費用には

  • ライセンス料
  • 導入費用
  • 開発費用

があり、クラウド型ERPはオンプレミス型ERPに比べて安価でも、ライセンス料やサポート費用等によって費用は大きく変わります。
また、オンプレミス型ERPの場合は、自社用にカスタマイズをするので高額になる可能性が高いでしょう。

ランニングコストとは、毎月または毎年かかる

  • 保守料
  • 月額利用料

のことを指します。オンプレミス型ERPは社内で管理するため、クラウド型ERPに比べてこれらの費用を抑えられます。
クラウド型ERPは利用数が増えるとその分、ランニングコストも増えますので、長期的にみるとオンプレミス型ERPよりも高くなる場合があるのです。

②多種多様なERPシステムは選定が難しい

ERPシステムは国内だけではなく国外からも製品が提供されているため、自社に合ったシステムを選定するのが難しいです。

そのため「自社に合う製品」だけではなく、法改正にも対応していることやサポート体制がしっかりと整っていることも、選定の上では重要ですので、よく検討しましょう。

③運用には指導やルールの徹底が必要になる

新しく導入したERPシステムは、使いこなせる人もいれば、なかなか使いこなせない人もいます。
また、ミスなく正しい情報を入力しなければ、導入した意味がありません。

そのため、運用には指導やルールの徹底が必要となりますので、時間をかけて十分な説明を行い、企業全体で理解することが大切です。

ERPシステムの導入事例

某食品メーカーの事例

某食品メーカーは少量多品種生産の会社で、独自開発の基幹システムがこの強みを支えてきました。
しかし、この基幹システムが稼働するメインフレームの保守期限の終わりが近づいてきたこともあり、新たなシステムの導入を検討することになったのです。

「少量多品種生産かつ短納期と自社戦略の推進を両立する仕組み」と「各工場の統一基盤を整備」を実現できるシステムが、ERPシステムでした。

その結果、最小限のカスタマイズで基幹システムを構築することができ、少量多品種生産かつ短納期と自社戦略の推進を両立する各工場の統一基盤を実現することができたのです。

また、業務が特定の人にしかわからない状態の解消や原価管理の精度向上等、生産業務の効率化にもつながりました。

某運送業の事例

某運送業は液状食品原料輸送の会社で、主に食品メーカーの依頼を受けて物流事業を行っています。
もともと、運送業向けの基幹システムを使用していましたが、古いシステムでレスポンスが遅いため、営業所との情報を共有できない悩みを抱えていました。
また、運送業ではドライバーの健康状態や持ち物等を確認する点呼業務を行っており、注意事項等はドライバーへ口頭で伝えることが多いため、言い忘れや書き間違い等のミスが起こってしまう心配があったのです。

そこで、システムを買い替える機会にERPシステムを導入したところ、本社と営業所のシステムの一元管理で無駄な作業や得意先の請求確認作業が大幅に減り、顧客満足度が向上しました。

また、オプションで自社仕様の運行指示書ができ、言い忘れや書き間違い等人的ミスの軽減にも成功し、課題を解消することができたのです。

失敗しないERPシステムの導入手順

1、新規システムの構築か既存システムの利用かを検討

ERPシステムの導入の目的は「企業のありとあらゆる情報を一元化し、効率化を図ること」です。

そのため、システムを導入するためには目的を明確にし「新規システムを構築する」か「既存システムを利用するか」を検討する必要があります。
まずは、現在自社がどのような基幹システムを使用しているのかを把握しましょう。

新規システムを構築する場合は、日常行っている業務がシステムの機能に合っているかを確認します。
そして、機能の変更や追加をすることで自社にとって最適なERPシステムに仕上げることができるのです。
機能の変更や追加によって、コストが大幅にかかってしまう恐れがありますので、しっかりと検討しましょう。

既存システムを利用する場合は、今まで使用したことのないシステムを使用して業務を行うことになります。
そのため、自社の基幹システムで業務を行っている人にとっては、システムの機能を理解したり、慣れるまでに時間がかかってしまいますので、こまめな確認や見直し・改善を行いましょう。

ERPシステムは「iPaas(アイパース)」を利用して、ほかのシステム等との連携が可能ですので、現状のシステムとの兼ね合いをよく考えて検討してください。

※iPaas(アイパース)とは、クラウド上の業務システムを統合するためのクラウドサービスのこと

2、プロジェクトチームを結成

ERPシステムの導入にはプロジェクトチームを結成することが大切です。

各部署から選出することにより、様々な視点で情報を共有することができ、最適なシステムを作り上げることが可能になります。
その中でも、各部署の業務を熟知した人がリーダーとなることで万全な導入体制を築くことができるのです。

3、新しいフローを用意する

ERPシステムを導入するために「業務の棚卸」を行いましょう。

「業務の棚卸」とは日常の業務を洗い出すことです。
洗い出すことによって

  • 業務にかかる時間
  • 重複している業務
  • コスト
  • 仕事量

等を把握することができます。

ERPシステムの導入で「どの部署がどの範囲までを受け持つ」のかを決めることができますので、それに基づいて新しい業務フローを用意しましょう。

4、試験運用からはじめ、改善しつつ本運用に切り替えていく

ERPシステムを導入したら、導入する前のシステムを使用しながら試験的に運用を行います。
導入後すぐにERPシステムを運用してしまうと、新しいシステムに慣れていないため、トラブルになった場合に対処ができない可能性があるからです。

しばらくの間は新旧のシステムを並行して運用し、問題があれば改善、問題なく運用できれば、本運用に切り替える方法をとるようにしましょう。

ERPシステムとの併用でさらなる業務の効率化が図れる「oneplat」

oneplat」は納品書・請求書の取りまとめや全国の金融機関と連携して、支払いの実行や振込手数料の無料化、会計システムとの連携をパッケージにした金融ソリューションです。

ERPシステムを導入している企業の場合は、発注・入荷処理・仕訳・支払い・消込までを一元管理しますが、場合により入荷処理は納品書と発注データ・納品物を突き合わせてERPシステムに入力を行うことがあります。

紙の納品書では、入荷処理を「oneplat」の納品データから連携して行うことができる場合もありますので、ERPシステムとの併用でさらなる業務の改善を図ることができるのです。

まとめ

それぞれの部署が専用のシステムを使用していることで、部署間での連携が取れず、必要な情報を得るにも時間がかかってしまったり、経営者は会社の経営状態を把握できないという問題が起こっていました。

その問題を解決できるシステムが「ERPシステム」です。

この記事では、ERPシステムのメリットやデメリット、手順について解説いたしました。ERPシステム導入は大きなプロジェクトと言えますので、よく検討してから導入するようにしましょう。

この記事を読んだ方で「受け取る」納品書や請求書を「電子化」することに興味がある方はいませんか?

oneplatは、納品書や請求書をデータで受け取れるサービスです。

会社組織の財務・経理部門や、支店・店舗・工場などの、 管理業務における下記の課題解決にoneplatは大きく貢献できます。

  • 会計/販売管理システムとの連携で仕訳入力が不要に
  • 取りまとめたデータを自動で取り込み
  • 総合振込データの作成や仕訳の消込も自動入力

導入後は複雑なデータ入力業務に時間を奪われることなく、本来の業務へ時間とコストを割くことが可能です。

このウェブサイトでは、他にもコスト削減・業務効率化に役立つ資料を無料で配布しておりますので、 是非、この機会に一度資料ダウンロードをしてみください。

oneplus編集部

この記事の執筆者

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