納品書や請求書を電子化することで業務効率化やコスト削減が期待できます。しかし、電子化の方法によっては、データ変換や法令遵守のために新たな手間が発生する場合もあるため、それぞれのメリット・デメリットを把握し、自社に適した方法を選択することが重要になります。
本記事では、受け取る納品書・請求書の電子化における5つの方法について、それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。
受け取る納品書・請求書の電子化とは
納品書や請求書を紙でやり取りしていると、受領側は確認・転記・保管など多くの手作業を伴い、経理担当者の負担となるケースが少なくありません。
その課題を解消する手段として注目されているのが「電子化」です。紙の書類をデータとして受け取り・管理することで、業務の効率化と正確性の向上を図ることができます。
メール添付のPDFやクラウドサービスを通じて受け取る形が一般的で、電子化により検索・共有が容易になり、紛失や保管スペースの問題も軽減されます。また、会計システムとの自動連携を行うことで、入力作業の削減や支払い処理の迅速化も実現可能です。
ただし、電子化の方法によって運用コストや管理体制の構築に必要な工数は異なります。どの仕組みを採用するかによって、使い勝手や法令対応のしやすさも変わるため、自社の業務プロセスに適した手段を選定することが重要です。
紙で受け取る納品書・請求書の課題
紙中心の運用では、受け取りから保管に至るまで人の手を介する場面が多く、ミスや遅延のリスクがつきまといます。
ここでは、納品書や請求書を受け取る場合に発生しやすい課題についてご説明します。
保管・検索に手間がかかる
紙の納品書や請求書は、取引先や年月ごとに整理して保管する必要があるため、スペースを圧迫するうえに管理コストも発生します。特に長期保存が義務付けられている経理書類では、年々保管量が増え、倉庫やキャビネットの確保が課題となります。
また、過去の書類を確認する際には、物理的にファイルを取り出して目視で探す必要があり、検索性が低い点も問題です。急な照会や監査対応の際にすぐに該当書類を見つけられず、業務が滞るケースも少なくありません。
承認に時間を要する
取引先から届いた紙の書類を経理担当者が上長や関係部署へ順に回覧し、押印や署名をもらう必要があるため、物理的な移動が発生します。
承認者が席を外していたり別拠点にいたりすると、書類が滞留し、承認までに数日かかることも珍しくありません。郵送や社内便でやり取りを行う場合はさらに遅延し、支払い処理のスケジュールに影響が出ることもあります。
また、紙での回覧は進捗が見えづらく、「誰のところで止まっているのか」が把握できない点も課題です。確認漏れや押印ミスが起きやすく、全体の業務スピードを著しく低下させる原因となります。
【関連記事】請求書への押印は電子印鑑で対応可能?有効性や作り方を解説
不正が起こりやすい
紙の納品書や請求書は内容を手書きで修正できてしまうほか、印刷物の差し替えや複製も容易なため、改ざんや二重請求といったリスクを完全に排除することは困難です。
さらに、紙書類は紛失や破損のリスクも高く、担当者の不在や引き継ぎ漏れによって所在が不明になるケースも少なくありません。
特に部署や拠点をまたぐ場合は、誰がいつどの書類を確認したのかを追跡できないため、管理体制の不透明さが不正発生の温床となります。
【関連記事】請求書や売上で起こりがち!二重(重複)計上の原因と防止する方法
受け取る納品書・請求書の電子化と電子帳簿保存法
納品書や請求書を電子化する際には、「電子帳簿保存法」の要件を満たす必要があります。例えば真実性を確保するために、以下のいずれかの対応が必要です。
- 受け取ったデータに速やかにタイムスタンプを付与する
- 訂正や削除が行われた際に履歴が残るシステムを利用する
- 訂正や削除ができないシステムを利用する
- 訂正や削除を防止する事務処理規程を定め、厳格に運用する
なお、紙の納品書や請求書を受領した場合は、保存方法として原本をそのまま保存する代わりに、スキャナで読み取りデータとして保存することができます。
スキャナ保存制度を利用するかどうかは任意ですが、細かい要件が定められているため注意が必要です。
詳しくは以下の記事で解説していますので、併せてお読みください。
【関連記事】電子化した請求書と納品書の保存期間は?電子帳簿保存法の概要
電子化する方法とメリット・デメリット
納品書や請求書を電子化する方法として、次の5つが挙げられます。
- スキャナ保存
- スマホで撮影
- OCR技術の活用
- 専用システムの開発
- 既成の電子化システムを導入
各方法のメリット・デメリットについて確認していきます。
スキャナ保存
紙で受け取った書類をスキャナを使って電子化する方法です。
メリット
請求書や領収書などの国税関係書類は、法律で7年間の保存が義務付けられています。取引先が多い企業ほど膨大な量の書類を保管しなければならず、保管スペースの確保やファイリングの手間が課題となります。
しかし、スキャナ保存を正しく行うことで、紙の原本を保存する必要がなくなり、スペースの節約や保管・管理コストの削減が可能です。
また、スキャナは既に多くの企業で導入されているため、要件を満たしていれば新たな設備投資が不要である点もメリットの一つです。
デメリット
書類をスキャナしてデータとして保管するためには、電子帳簿保存法によるスキャナ保存の要件を満たさなければいけません。具体的には以下のような要件があります。
- 解像度200dpi以上
- 赤・青・緑それぞれ256階調(約1,677万色)以上
- 書類の受領後、7営業日以内にデータを作成・保存する
- タイムスタンプを付与する
- 訂正・削除した履歴を確認できる
- 帳簿との関連性を確認できる
- 14インチ以上のカラーディスプレイを設置する
- 取引年月日、取引先、取引金額などで検索できる機能を備える
スキャナ保存を導入する際に上記の要件を満たしていない場合は、対応する機器を購入する必要があり初期費用が発生します。また、納品書、請求書、領収書などの重要書類に関しては入力期間の制限があるため、法令に則り正しく運用するためにも、業務フローの作成や社内周知を行うことも重要です。
スマホで撮影
紙の書類をスマートフォンで撮影して電子化する方法です。
メリット
スマホを使うことで、簡単に書類を撮影し、画像データとして取り込むことができます。
例えばiPhoneの「メモ」アプリを利用すれば、スキャンした書類をPDF形式で保存可能です。データはiCloudやデバイス内に保存され、メールなどで簡単に共有できる点も非常に便利です。
特に、現場で納品書の内容と実際の納品物に相違がないかを確認した後、本部に情報共有したい場合に適しています。
デメリット
スマホでスキャンしたデータは基本的に画像データとして保存されます。そのため、パソコンに取り込んでも画像として認識され、文字情報を直接処理することができません。
つまり、文字情報をデータに変換するための手作業が別途必要となり、業務効率化という観点ではあまり優れているとは言いにくいでしょう。
特に、大量の書類をデータ化する場合には担当者の負担が大きく、ヒューマンエラーが発生するリスクも高まります。
OCR技術の活用
「OCR(Optical Character Reader)」とは、紙書類から文字を認識し、テキストデータに変換する技術です。
メリット
紙の書類をデータ化する際には、手作業でシステムに入力する方法が一般的です。しかし、手作業による入力は作業負担が大きく、特に請求書の処理が集中する時期には経理担当者の負担が増加することで、入力ミスにつながる可能性もあります。
しかしOCRを利用することで、請求書をスキャンするだけで文字を読み取り、テキストデータに変換できるようになるため、手作業によるミスを削減することができるでしょう。
デメリット
OCRを利用する上で、ネックとなるのは読み取り精度です。近年はAI技術の進化により正確性が向上していますが、依然として100%には達していません。
特に請求書のフォーマットは企業によって異なり、内容も複雑なため、正しく読み取れないケースが発生しやすいです。
目視で確認し、手入力で修正する作業が必要になる場合も多く、完全に手間を省くことができないのがデメリットです。
専用システムの開発
メリット
自社の要件に合わせた専用のシステムを開発することにより、業務に最適化されたシステムを作ることが可能です。例えば請求書の承認フローをシステムに組み込むことで、上司や経理担当者の確認作業がスムーズになり、請求書処理のスピードが向上するでしょう。また、ヒューマンエラーの防止やテレワークの推進にもつながり、業務全体の効率化が期待されます。
デメリット
自社でシステムを開発する場合は、エンジニアの人件費やサーバー費用など、初期投資が高額になりがちです。また、開発が完了した後も、システムの保守や運用には継続的な費用がかかります。
パッケージ化された電子化専用サービスの導入
受け取る納品書・請求書の電子化に特化したサービスを導入する方法です。ここでは主に、オンライン上のサーバーを介して利用するクラウド型の納品書・請求書電子化サービスについて解説します。
メリット
パッケージ化された納品書・請求書電子化サービスを導入することで、自社でシステムを一から開発するよりも初期費用や運用コストを大幅に削減できます。
またクラウド型の納品書・請求書電子化サービスは、インターネット環境があればどこからでもアクセス可能です。自宅や出先でも納品データや請求データの確認・承認を行えるようになるため、働き方の柔軟性が広がります。
【関連記事】経理を効率化!ペーパーレス化事例5選|メリット・デメリットと導入手順
デメリット
導入費用が必要なサービスや、電子化する納品書・請求書の枚数や取引先数によって料金が変動したりするサービスなど、選択する電子化サービスによって費用が大きく異なります。選択するサービスによっては高額な費用がかかってしまう可能性があるため、電子化する納品書・請求書の枚数や取引先数など自社の状況に応じて導入するサービスを比較・検討しなくてはなりません。
また、受け取る納品書・請求書の電子化サービスの中には、電子化する枚数や取引先数に関わらず月額料金が固定の定額プランが用意されているものもあります。受け取る納品書・請求書の電子化を初めて検討しているという場合は、定額プランの電子化サービスを検討してみるのも良いのではないでしょうか。
受け取る納品書・請求書を電子化する方法の選び方
納品書や請求書を電子化する方法をご紹介しましたが、具体的にどの手段が自社に適しているのか迷う方も多いでしょう。ここでは、電子化の選び方について、3つの観点からご説明します。
受け取る枚数に応じて選ぶ
電子化の方法を検討する際は、まず納品書・請求書の件数や処理頻度を基準に考えることが重要です。月に数十件程度と比較的少ない場合は、スキャナーやスマートフォンで撮影する方法でも十分対応できます。初期コストを抑えられ、導入ハードルも低いため、試験的な運用にも適しています。
書類の受領件数が多い場合は、手動では処理が追いつかず、ミスや遅延のリスクが高まるでしょう。そのような場合は、OCR(文字認識)サービスや電子化専用システムの導入が有効です。
【関連記事】OCRとは?注目されている背景や得意領域や導入の上での注意点まで解説!
自動化・連携機能で選ぶ
「紙をなくすこと」を目的に電子化へ取り組むのであれば、スキャナーやスマートフォンでの手動対応でも効果があります。書類の受け渡しや保管の手間を減らすだけでも、一定の業務効率化が見込めます。
しかし、経理全体の業務改善や生産性向上を目指す場合は、販売管理システムや会計システムと連携できる電子化システムを選ぶのが効果的です。データを自動で取り込み、仕訳や支払処理まで一気通貫で管理できるようになれば、入力作業の削減や確認ミスの防止にもつながります。
セキュリティ・法令対応の観点で選ぶ
電子帳簿保存法には、データ保存に関する細かな要件が定められています。
例えばスキャナーを利用する場合は、取引年月日や金額・取引先名で検索できる状態にしておく必要があります。具体的には、別途Excelなどで一覧表を作成し、検索条件を満たすように管理する手間が発生します。
手作業で対応するのは現実的ではないため、最新の法令に準拠した電子化システムを利用するのが安全かつ効率的です。データの改ざん防止やアクセス権限の管理なども備わっているため、セキュリティ面でも安心して運用できるでしょう。
受け取る納品書・請求書を電子化する際の注意点
紙からデータに移行すれば業務効率は大きく向上しますが、運用方法を誤るとトラブルが発生する恐れもあります。以下に、受領側が電子化を進める前に確認しておきたいポイントをまとめました。
原本を保存するかどうか
納品書や請求書を電子化する際には、紙の原本をどのように扱うかをあらかじめ決めておく必要があります。法人では、請求書などの取引関係書類の保管期間は原則7年間とされています。電子化を行っても、法令に沿った形でデータを保存できていなければ、紙の原本を破棄することはできません。
また、電子化サービスによっては、クラウド上でのデータ保管期間を独自に設定している場合があります。契約期間が終了するとデータが削除されるケースもあるため、「どの程度の期間を保管してもらえるのか」「契約終了後にデータを引き継げるのか」などを事前に確認しておくことが重要です。
【関連記事】電子化した請求書と納品書の保存期間は?電子帳簿保存法の概要
取引先に負担がかかるか
電子化を進める際は、自社だけでなく取引先の負担にも配慮することが欠かせません。
例えば、自社または代行業者が受け取った紙の書類を電子化する仕組みであれば、取引先の発行手順はこれまでと変わりません。そのためスムーズに移行しやすく、関係性を損なう心配も少ないでしょう。
一方、取引先が専用のポータルサイトにログインして請求書をアップロードしたり、入力フォームに直接データを登録したりする方式では相手の負担が増えてしまうかもしれません。
特に取引先のITリテラシーや社内体制が十分でない場合は負担に感じ、電子化の取り組み自体が進まなくなることもあります。
電子化を円滑に進めるためには、取引先の負担を最小限に抑え、双方が無理なく運用できる方法を選ぶようにしましょう。
データ変換不要!定額プランの電子化サービスなら「oneplat(ワンプラット)」
「oneplat(ワンプラット)」は納品書・請求書をデータとして受け取ることができる電子化サービスです。初期費用やサポート費用が不要なため、コストや導入時の手間を抑えつつ、スピーディーな電子化を実現します。
またoneplatは、第三者機関(株式会社ジーユーエヌ)が調査した「18の請求書受領ツール」に関する利用満足度調査において総合評価1位を獲得しました。受け取る納品書・請求書の電子化サービスとして多くの企業に選ばれています。
ここからは、oneplatの特徴をご紹介していきます。
受け取る納品書・請求書をデータで一元管理
oneplatを利用すれば、納品書や請求書をデータとして直接受け取ることができます。書類をスキャンしたり、データへ変換したりといった作業は発生しません。
紙の原本をファイリングしたり保管したりする必要がなく、管理にかかるコストや工数を削減することができます。
受け取る納品書・請求書をデータで一元管理できるため、支払い業務の大幅な効率化を実現することができるでしょう。
多種多様なシステムと連携できる
oneplatは、販売管理システムや会計システム、ネットバンキングとの連携が可能です。ほかにも、CSV連携に対応しているソフトならどれでも連携できるうえに、御社の運用フローも変える必要がありません。
例えば、納品データを販売管理システムと連携させると、これまで手作業で行っていた商品名の入力やコードの紐づけ作業が不要になります。また、請求データを会計システムと連携させることで仕訳の入力作業も自動化されます。
入力ミスのリスクも減り、より正確かつスピーディーな業務が実現するでしょう。
初期費用0円、月額33,000円
oneplatは月額33,000円(税込)でご利用いただけるサービスです。初期費用も一切不要ですので、手軽にスタートできるのが魅力です。
さらに、受け取る納品書・請求書やシステムを利用するお取引様が増えたとしても追加費用は発生しません。コストパフォーマンスに優れたoneplatであれば、スモールスタートで受け取る納品書・請求書の電子化を導入することが可能です。
oneplatを活用した納品書・請求書の電子化事例
oneplatを導入し、納品書・請求書の管理業務を効率化した企業の事例をご紹介します。導入の背景や効果を比較しながら、自社に近いケースを参考にしてみてください。
毎月の段ボール3箱分の納品書・請求書を電子化|株式会社マッシュビューティーラボ 様

株式会社マッシュビューティーラボ様は、毎月段ボール3箱分にも及ぶ納品書や請求書を紙で受け取っていました。手作業で照合・保管していたため、処理に膨大な時間がかかるだけでなく、保管スペースの確保や過去データの確認にも大きな負担が生じていました。
oneplat導入後は、紙の書類をデジタルデータとして一元管理できるようになり、これまで週に2日を費やしていた納品書の照合作業時間が大幅に減りました。進捗状況や承認ステータスがリアルタイムで把握できるようになり、確認漏れや処理遅延の防止にもつながりました。
さらに、納品書・請求書の書式が統一されたことで経理部門での確認作業がスムーズになり、全体の業務スピードと正確性が大きく向上しています。
月に10時間以上の工数を削減|株式会社ケーユーホールディングス 様

株式会社ケーユーホールディングス様は、外注業者から紙の納品書が届くたびに、各拠点で基幹システムへ手入力を行っていました。しかし、請求書の内容が納品書と一致しないケースが頻発し、そのたびに確認・修正作業が発生することが課題でした。対応に多くの時間を要し、拠点での処理が遅れると経理部門全体のスケジュールにも影響を及ぼす状況でした。
OCRの導入も検討されましたが、結局は人の目による修正が必要であり、根本的な効率化にはつながりませんでした。そこで、納品書と請求書の突合作業をシステム上で自動化できるoneplatを採用しました。
結果的に、紙ベースの入力や照合といった手動作業が大幅に削減され、月あたり10時間以上の工数削減を実現しました。
月300~400枚の納品書を電子化し、チェック業務を大幅に改善|株式会社セイザンフーズ 様

飲食店を経営する株式会社セイザンフーズ様では、これまで毎月300〜400枚もの納品書が封筒にまとめて届いていました。店舗数の拡大に伴い、紙の保管スペースが不足し、紛失や破損のリスクも増加。段ボールで書類を保管・運搬する作業にも多くの時間と労力を要していました。
こうした課題を解消するため、同社はoneplatを導入し、納品書・請求書の完全ペーパーレス化を実現しました。店舗側では、納品書を日付順に整理・保管する必要がなくなり、担当者の負担が大幅に軽減したのです。
経理部門においても、請求書受領時のチェック作業が効率化され、確認漏れや処理遅延が減少しました。今後さらに店舗展開やフランチャイズ事業の拡大を進めていく中で、oneplatによる電子化の効果はより一層大きくなる見込みです。
まとめ
本記事では、受け取る納品書・請求書を電子化する具体的な方法と、それぞれのメリット・デメリットについて解説しました。
紙の書類をデータに移行することで、業務効率の向上やコスト削減が期待できますが、方法によってはデータ変換や法令遵守、システム連携といった点で新たな手間や費用が発生する場合もあります。
そのような手間や費用を抑えつつ、効率的かつ簡単に電子化を進めるためには、電子化専用サービスの導入が効果的です。納品書や請求書の電子化を検討しているご担当者様は、是非お気軽にお問い合わせください。


