法人も寄付で払う税金を減らせる?寄付先によって異なる節税効果

合法的に行える節税対策のひとつに「寄付金」がありますが、全体像を理解している方は少ないのではないでしょうか。

今回の記事では、下記内容について紹介します。

  • 法人税の計算方法をおさらいし、税金対策について再確認
  • 寄付金に該当するケース、しないケース
  • 寄付金の4つの種類と損金算入限度額を知る
  • 企業版ふるさと納税とは?
目次

税金対策をするために法人の税金の仕組みをおさらいしよう

まず最初に「法人税額はどのように計算されているのか」、そして「支払う法人税額を減らすにはどうしたらいいのか」についておさらいしましょう。

法人税額の求め方=課税所得(益金-損金)×税率

法人税額は、課税所得に税率を乗じて計算されます。計算式にすると

「法人税額=課税所得×税率」

です。そして課税所得は「益金から損金を差し引いて計算」されるので、計算式は下記のように書き換えることができます。

法人税額=課税所得×税率=(益金ー損金)×税率

「益金」とは税額を計算する上での「収益」のこと、そして「損金」は同じく「費用」のことです。

次に税率ですが、資本金額や法人の種類によって異なります。資本金1億円以下の中小企業の税率は下記のように定められているので、今回を機に確認しておきましょう。

  • 所得が800万円以下の税率 → 15%
  • 800万円を超えた部分の所得にかかる税率 → 23.2%

ひとつ例を出して計算してみます。

「益金」が1,500万円、「損金」が600万円の会社があったと仮定しましょう。

今回のケースでは、課税所得は900万円(1,500ー600)になります。

所得が800万円までは税率が15%なので、800万円×15%=120万円。

800万円を超えた分の所得については税率が23.2%になるので、100万円(900ー800)×23.2%=23.2万円。

よって今回のケースで支払う法人税額は、120+23.2=143.2万円と計算することができます。

損金が増えれば支払う税金が減る⇒税金対策になる

税率は定められているので、変更することはできません。

よって支払う法人税額を減らすためには、益金(≒売上)を減らすか、損金(≒費用)を増やすかの二者択一になることがわかります。

しかし、あえて売上を減らすような経営を行うことはないはずです。

上記より、損金を増やすことが支払う税金を減らすことになるので、節税対策に繋がることが見えてきたのではないでしょうか。

寄付金でできる税金対策をするために知っておきたい「寄付金」のこと

寄付金とは何か? 該当するものとしないものから明確にしよう

寄付金とは、何の見返りも求めずに先方にお金を贈与することを言います。しかし、見返りがないからと言ってすべてが寄付金として認められるわけではなく、ほかの勘定科目で処理されるケースもあるのです。

基本的に寄付金は、先ほど出てきた「損金」に該当します。しかし「寄付金であれば、すべて寄付金として処理できる」わけではないので注意が必要です。法人税を減らす目的で寄付したはずなのに、寄付金として処理できない事態が起きないよう事前に確認しましょう。

また寄付金の種類によっては、損金として計上できる金額に制限が定められているものもあります。

寄付金に該当するケース

寄付金に該当するケースを紹介します。

  • 自社の名前が広告等に掲載されない協賛金
  • 神社の祭礼等に支払うお金
  • 資産を時価よりも低い価格で譲った場合は、譲った価格との差額は寄付金になる。
  • 無利息で金銭を貸し付けた場合は、受け取らない利息部分は寄付金となる。

寄付金以外の勘定科目に当てはまってしまうケース

寄付金ではなく、ほかの勘定科目として処理されてしまうケースを紹介します。

  • 自社の名前が広告等に掲載される協賛金は、寄付金ではなく「宣伝広告費」に当てはまる。
  • 取引先に贈る香典やお祝いは、例え金銭であっても「接待交際費」に当てはまる。

寄付金は種類によって損金算入できる額に制限がある

寄付金になるケースとならないケースを紹介しましたが、実は寄付金は主に4つに分類されています。そして種類によって、損金にできる金額に制限が設けられているのです。

なぜ、損金にできる金額に制限が設けられているのか?

それは先述の通り、損金を増やすことが法人税額の減少に繋がるからです。節税対策という名の下、企業が損金になる寄付金を無制限に行うことができないようにしています。

次の章で、寄付金の4つの種類について理解を深めていきましょう。

寄付金の主な4種類とそれぞれの損金算入限度額の求め方

寄付金は寄付先や内容によって、4つに分類されています。それぞれどのようなものが該当するのか、そして限度額はいくらなのかを確認していきましょう。

1.国や地方公共団体への寄付金|全額損金算入が可能

国や地方公共団体への寄付金については、全額損金への算入が可能です。

どのようなものが該当するのか、下記に例を挙げます。

  • 国、都道府県、市区町村への寄付金
  • 震災や水害等の義援金で、都道府県や市区町村に直接寄付されたもの
  • 日本赤十字社へ直接寄付されたもの
  • 災害時に、新聞社等の報道機関が被災者のために募集している義援金(最終的に、義援金配分委員会等にお金が行き渡ることが明らかなものも含む)
  • 企業版のふるさと納税

2.指定寄付金|全額損金算入が可能

指定寄付金とは、「一般に広く募集されている」かつ「教育や文化の向上等、公益を増進させるための支出かつ緊急性が高いもの」として財務大臣が指定している寄付金のことです。

指定寄付金も、寄付した全額を損金として計上することが可能になっています。

指定寄付金の例を、下記に挙げます。

  • 赤い羽根共同募金
  • 日本赤十字社への寄付のうち、財務大臣の承認を受けているもの
  • 国立大学法人への寄付金
  • 公益社団法人や公益財団法人への寄付金

3.特定公益増進法人等への寄付金|損金算入に制限がある

特定公益増進法人とは、「教育・科学分野の新興に寄与している」「文化の向上や社会福祉分野へ貢献している」等、公益を増進する役割を果たしている法人です。こうした法人への寄付は寄付金として認められますが、損金に計上できる金額には制限があります。

なお、このケースに当てはまる寄付金の例を下記に挙げます。

  • 日本赤十字社の運営費や通常経費として使われる寄付金
  • 認定NPO法人への特定非営利活動に関する寄付

特定公益増進法人等への寄付金に対する損金算入限度額の求め方

「特定公益増進法人等への寄付金」の損金算入限度額は、以下の計算式で求めます。

限度額=(資本金等の額×当期の月数/12×3.75/1,000+所得金額×6.25/100)×1/2

「資本金等の額」とは、「資本金の額+資本準備金の額」です。

「所得金額」は、寄付金を損金として計上する前の金額を使用します。

もし特別損金算入限度額を超えている場合は、超えた分については「その他一般の寄付金」に含めることができます。

計算の結果によって、損金に算入できる金額が変わります。

  • 「寄付額>限度額」だった場合は、「限度額」を損金算入
  • 「限度額>寄付額」だった場合は、「寄付額全額」を損金算入

4.その他一般の寄付金|損金算入に制限がある

今まで紹介してきた3つのどれにも該当しない寄付金は、すべて「その他一般の寄付金」に該当します。また「その他一般の寄付金」も、損金として計上できる金額に制限が定められています。

このケースに該当する寄付金の例は、下記の通りです。

  • 近所の神社で行われるお祭り寄進費用
  • 債権の放棄
  • 無利息で貸付を行った際の、本来受け取るべき利息分
  • 時価よりも低い金額で資産を譲渡した場合は
  • 政治団体への寄付
  • 町内会への寄付
  • 宗教法人への寄付

その他一般の寄付金に対する損金算入限度額の求め方

「その他一般の寄付金」の損金算入限度額は、以下の計算式で求めます。

限度額=(資本金等の額×当期の月数/12×2.5/1,000+所得金額×2.5/100)×1/4

「資本金等の額」とは、「資本金の額+資本準備金の額」です。

「所得金額」は、寄付金を損金として計上する前の金額を使用します。

計算の結果によって、損金に算入できる金額が変わります。

  • 「寄付額>限度額」だった場合は、「限度額」を損金算入
  • 「限度額>寄付額」だった場合は、「寄付額全額」を損金算入

節税に活用できる「地方創生応援税制(法人住民税及び法人事業税における寄附金税額控除)」という制度

「地方創生応援税制(通称:企業版ふるさと納税)」とはどんな制度か?

個人が所得税額の控除を目的として行う「ふるさと納税」ですが、実は法人にもふるさと納税の制度があります。それが企業版ふるさと納税と呼ばれている、地方創生応援税制です。

国が認定した地方公共団体の地方創生プロジェクトに寄付を行うことで、「寄付金の2割を法人住民税から」「1割を法人事業税から」控除することができます。

ただし下記2つの注意点があるので、覚えておきましょう。

  • 法人住民税、法人事業税ともに控除の上限が設定されています。なお、法人住民税で上限を上回ってしまった部分は、法人税から控除を行うことが可能です。しかし法人税についても上限が設定されているので注意しましょう。
  • 寄付金額は加減が設定されており、最低でも10万円が必要です。

地方創生応援税制を利用する流れを見てみよう

企業版ふるさと納税を利用する際の一般的な流れは、下記になります。

  1. 内閣府によって認定された「まち・ひと・しごと創生寄付活用事業」の中から寄付を行う地方公共団体を選び、寄付金を支払う。
  2. 地方公共団体から、寄付金額の領収書が送付されてくる。
  3. 決算時に「地方創生応援税制」の適用を申請し、法人税額控除の優遇を受ける。

ポータルサイトがあるので、活用を考えている場合には早めに確認しておきましょう。

地方創生応援税制の対象外となる自治体を確認しておこう

企業版ふるさと納税の対象外となる自治体には条件があります。どのような自治体が該当するのか、確認しておきましょう。

  • 本社がある地方公共団体
  • 事業を実施する年度の前年度に地方交付税の不交付団体(都道府県)
  • 「事業を実施する年度の前年度に地方交付税の不交付団体」かつ「全域が企業版ふるさと納税における地方活力向上地域以外の地域にある市区町村

法人が寄付をするにあたっての注意点

主に注意しておくべき点を2つ紹介します。

・支出した事実が必要
寄付金を損金として計上するためには実際に支払うことが必要で、未払計上は認められていないので注意が必要です。寄付金は、支払いの事実がある事業年度に計上しなければいけません。また金銭ではなく資産を寄付する場合は、支出が行われた日付を確認できる書類も準備しておくと良いでしょう。

・金銭以外で寄付金と判断されるケース
資産を時価よりも低い金額で譲った場合は、時価との差額は寄付金として認定されるでしょう。また無利息でお金を貸し付けた場合は、受け取らない利息分は寄付金となります。関係会社に対して債権放棄を行う場合も、寄付金として判断されることを覚えておいた方がいいでしょう。

まとめ

寄付金をうまく活用して、税金対策を行ってみてはいかがでしょうか。

  • 支払う税金額を減らすには損金を増やすことがポイントで、寄付金は損金として計上できる。しかし損金として計上できる限度額が設定されている。
  • 寄付金ではなくほかの勘定科目に該当してしまうケースがあるので要注意。
  • 企業版ふるさと納税を活用して税金対策を行うこともできる。

本記事を参考に知識を深め、経理業務に役立ててください。

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oneplus編集部

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