経営分析・財務分析とは? やり方や財務分析の限界も紹介

企業経営に関わっている方なら、「経営分析」と「財務分析」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。企業の経営状態を知るために、これらの定期的なチェックは必要です。

なぜかと言えば、人間の健康診断と同じく、体感的に経営状態が良好だと考えていても、実はトラブルを抱えていることがあるからです。健康診断で特に不調を感じていなくても疾患が見つかった方、これまでは良好だったものが不良になった方は少なくないでしょう。企業経営にもそれが言えます。

ですから、定期的に客観的な数字やデータに基づいて企業内容をチェックし、経営の良し悪しを判断することが重要です。

「経営分析」と「財務分析」のふたつは同義とされることも多いですが、まったく同じとも言えません。簡単に言えば、経営分析の中に財務分析が含まれています。

経営分析は、企業の経済活動を分析して、企業内容(財政状況や経営成績)を見ます。その中心が、財務分析という訳です。なお、財務分析をする際には、企業の財務状態に焦点を当てます。

この記事では、両者の違いや各分析によって何がわかるかについて解説します。是非、最後までお読みいただき、お仕事にお役立てください。

目次

経営分析・財務分析とはそれぞれどのような意味?

「経営分析」=企業の経営状況を可視化し分析する方法の総称

経営分析とは、経営状況を可視化して分析する方法の総称です。内部分析と外部分析に分けられます。その外部分析に含まれるのが、財務分析(注)です。

両者の違いを見てみましょう。

  • 内部分析:
    • 経営状態を分析する主体=企業内部の人間
    • 企業内部の経営管理者の経営管理に役立つ情報を提供するために行われる分析(管理会計等)
  • 外部分析:
    • 経営状態を分析する主体=企業外部の人間
    • 企業外部の利害関係者のために行われる分析(財務分析等)

内部分析のひとつである管理会計は、経営管理に役立つことを目的にした企業会計のことです。要するに、社内向けの分析です。主な例として、事業計画書や取締役会資料等が挙げられます。

一方で、外部分析である財務分析は、利害関係者に役立つことを目的にしたものです。分析目的により、信用分析や投資分析として活用されます。

【補足】
 管理会計は以下のふたつに分けられます。
 ・利益管理会計:
  計画や予算を策定して、目標利益を確保しようとするもの
 ・原価管理会計:
  標準原価管理や原価改善を実施して、目標原価に到達しようとするもの

【補足2】
 ・信用分析:
  銀行等の金融機関が企業に対して融資する際に、その企業の債務返済能力があるかどうかを知るために行う財務分析。
 ・投資分析:
  投資家が証券に投資する際に、投資の安全性や収益性を見るための財務分析。

(注)財務分析は外部分析として利用されることが多いですが、内部分析でも使われることがあります。

経営分析が二分されることがわかっていただけたでしょうか。そのうちの財務分析について、もう少し詳しく見ていきましょう。

「財務分析」=決算書を用いて会社の経営状態を捉えること

財務分析は、財務諸表分析とも呼ばれます。決算書類等から、企業の実態を外部に公表するために行う経営分析手法で、共通の公式や分析手法が使われます。
言い換えれば、利害関係者に対して、企業の財務状態・経営成績に関係する情報を提供するための分析です。それ故に、高い公平性と透明性が求められます。

財務分析は、決算書等から企業の収益力や安全性、支払能力を分析したもので、これらを捉えるものだと考えてよいでしょう。

経営分析と財務分析の違いは何なのでしょうか。次で詳しく見ていきます。

経営分析と財務分析・その違いは何か?

違い:経営分析≧財務分析・経営分析の方が意味が広い

これまでお伝えしてきたように、経営分析の中に財務分析が含まれています。経営分析は、財務分析より広義の言葉だとお考えください。

経営分析は、内部分析と外部分析に分かれます。その外部分析のひとつが財務分析です。

同義に捉えがちな言葉ですが、少し意味合いが異なります。

経営分析に含まれる、財務分析以外の分析方法は?

外部分析のほかの分析方法には、どのようなものがあるのでしょうか。汎用性の高いものをご紹介します。

人時生産性(にんじせいさんせい)
生産性の評価基準のひとつ。従業員1人が就業時間1時間に対して、どれだけの売上を生み出したかを表します。
この値が増加傾向もしくは高ければ、生産性が高く状況は良好です。製造業であれば、短時間で大量の商品を製造していることを意味します。したがって、人時生産性を向上させることは、企業の競争力を高める上で非常に重要になります。

人時生産性 = 売上高(粗利益等の場合もある)/ 総就業時間

現預金・純資産の推移
現預金が不足してしまえば、黒字であっても企業は倒産してしまいます。また、純資産がマイナスであれば債務超過の状態であり、赤字経営状態です。
これらは、プラスかつ増加傾向であることが望ましいでしょう。

売上総利益高営業利益率
本業の収益性を見る経営指標です。
標準水準が10%以上。優良水準が20%以上となります。

売上総利益高営業利益率= 営業利益高 ÷ 売上総利益高×100(%)

以下のふたつは比較分析の手法です。推移比較を行うことで、数値の良否を客観的に見ることができます。

  • 実数分析:
    決算書等の数値を前年数値や他社数値、業界平均の数値等と比較します。「量」の分析に適した方法です。
  • 比率分析:
    決算書等の比率を計算して分析をします。総資産利益率や自己資本利益率が代表的です。「質」の分析に適しています。

これらの分析には、多少なりとも社内リソースを必要とします。それでも、経営分析をしている企業が多いのはなぜでしょうか。それは、リソースを割くデメリット以上のメリットがあるからです。

経営分析を行う3つのメリット

1.客観性が高いため指標を見て会社の強み・弱みがわかる

自社の強みや弱みを把握することは、企業が健全な成長を目指す上で欠かせません。
しかしながら、これらを的確に把握することは難しいことです。ついつい、主観や体感が混ざってしまいます。主観や体感は、不確実性が高いものです。

だからこそ、必要になるのが経営分析です。経営分析では決算書等の数値を基に、自社の状態を把握できます。主観は介在せず、客観的かつ正確に強みや弱みを把握できるのです。
経営指標を、同業で企業規模が同程度の会社と比較してみるのもよいでしょう。

2.現在の経営の状況を把握し経営計画の策定を行うことができる

客観的に企業の強み・弱みを把握すれば、経営方針の策定や見直しが容易になります。主観で経営計画を決めてしまうより、根拠を伴った合理的な経営計画の策定が可能になるでしょう。

経営分析は、「強みをどう活かすか」「弱みをどう解決するか」ということを考える足掛かりになります。

3.金融機関や投資家が投資の可否を判断する材料になる

先ほどもお伝えしたように、経営分析には外部分析という企業外部の利害関係者に役立つ情報が含まれています。ですから、経営分析は金融機関の融資・投資家の投資の判断材料となります。

金融機関は信用分析により安全性や債務返済能力を判断して、融資するかどうかの判断材料にするでしょう。ならびに、投資家は投資分析により安全性や収益性を考慮して、ほかの情報も踏まえて投資するかどうかを決定することが多いはずです。

経営分析のメリットについてご理解いただけたところで、その分析に関わる財務三表について解説します。

財務分析を理解するのに最低限必要な決算書「財務三表」とは?

すべての会社は決算書(財務三表)を作成する必要があります。

  • 貸借対照表:資産・負債から財政状況を知る
  • 損益計算書:収益・費用から経営成績を知る
  • キャッシュフロー計算書:現金等の流れを知る

このうち、貸借対照表と損益計算書はすべての企業に対して作成が義務づけられている書類です。一方で、キャッシュフロー計算書の作成が義務付けられているのは、上場企業等です。非上場企業は、作成する義務はありません。

もう少し詳しく見ていきましょう。

貸借対照表

貸借対照表は決算時点の財政状態を明らかにするために作成されるものです。事業の収支の結果、資産と負債がどのような状態になっているのかが把握できます。

「資産 - 負債 = 資本」

損益計算書

損益計算書は企業・個人事業主の1会計期間(通常1年。事業年度とも言う。)における、経営成績の判断のために利益を計算したものです。一定の期間内に、どれだけの利益をどのようにして生み出したのかという収支を表します。

「利益 = 収益 - 費用(正確に言えば、損失も加味する)」

キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー計算書は流動性の高い現金・預金(キャッシュ)の流れを見るための書類です。資金繰りを管理するための書類で、資金がショートして黒字倒産することを防ぐ目的もあります。

「流入した現金等(キャッシュ・イン)- 流出した現金等(キャッシュ・アウト)」

財務分析のやり方は大きく分けて5つある

財務分析には、大きく分けて5つの手法があります。
各分析に使用する財務指標についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
>>経営判断に役立つ財務指標とは? 5つの分類と最低限の指標を解説

1.「安全性分析」=会社が持つ支払い能力を分析

企業が支払不能となり倒産する危険度を示す指標です。経営の安定性を、決算書の内容から分析します。ここで言う安定性とは、資金繰りが安定していて、短期・長期の支払い能力があるかどうか等、ということです。

指標の数値は高い方が好ましいとされています。しかし、高すぎる場合は経営が非効率的であると見なされかねません。

安全分析に用いられる代表的な指標は、流動比率・当座比率・株主資本比率・固定比率・インタレスト・カバレッジ・レシオ等です。

2.「収益性分析」=会社が利益を生み出す力を分析

企業の稼ぐ力を表す指標です。企業は資金調達した資本を使って、売上を創出します。そして、売上から費用を差し引いたものが利益です。ですから、ここで言う収益性とは、費用を抑えて少ない資本で大きな利益を稼ぎ出す力のことを言います。

経営戦略や企業経営の良し悪しが直接反映される指標であり、利害関係者から注目が集まる指標です。

収益性分析に使う代表的な指標は売上高総利益率・総資本経常利益率・自己資本当期純利益率・総資本回転率等です。

3.「成長性分析」=会社の成長の見通しを分析

企業の成長性(利益率の上昇・企業規模の拡大)を判断する指標です。

この分析は、単に企業の成長率や伸び率を把握するだけではありません。分析結果を基に、「どのような対策を打って事業拡大に繋げるのか」「どうやって継続的に利益を伸ばすのか」といった将来の見通しを立てる指標となります。

代表的な指標は、売上高増加率・経常利益増加率・総資本増加率・純資本増加率・従業員増加率等です。

4.「生産性分析」=会社のリソースや生み出した価値を分析

企業経営に不可欠な要素である「ヒト、モノ、カネ、情報」を活用して、企業がいかに付加価値を生み出したのかを示す指標です。

生産性分析により、会社が持つ資源がどのくらい効率的に生産能力を持っているかを数値化することができます。そして前年比較や同業他社との比較により、経営状態を把握したり、課題が明確化されたりするでしょう。この分析をすることで、どの部分を改善すべきなのかがわかります。

代表的な指標は、労働生産性・労働分配率のふたつです。

5.「活動性分析」=資本を使い売上につなげる活動力を分析

資本を適切に運用し、売上を増やせているかどうかを表す指標です。活動性とは、資本の使用効率のこと。ですから、資本を効率的に使い多くの売上を得ている企業であれば、その企業の活動性が高いと言えます。

代表的な指標は、総資本回転率・固定資産回転率・棚卸資産回転率等です。

中小企業を財務分析で測る限界とは?

ブランド力等数値で測れないものは財務分析できない

経営分析は、決算書等を使って分析を行います。ですから、そこに記載されないものは分析で把握できません。ですが、企業には決算書に載らない資産価値を有していることがあります。

決算書に載らない資産価値は、企業のブランド力や技術力、人的資源、顧客ネットワーク等です。これらは数値化できませんので、決算書等に記載されず、当然ながら経営分析に反映されません。

よって、経営分析で知り得た数値に、その数字の裏に隠れている決算書に載らない価値を加味したものが真の経営分析だと言えます。

決算書が未公表の企業が多く同業他社との比較ができない

経営分析の数値は、同業他社と比較する必要があります。なぜなら、業種によって数値の平均値が大きく異なるからです。企業規模によっても違うでしょう。

しかしながら、決算書を公開している企業は多くありません。ですので、 中小企業実態基本調査のような公のデータを活用したり、データバンクの企業情報を買ったりする必要があります。

決算書自体に誤りがあり正確な分析ができない場合がある

自社や比較対象とする他社の決算書等の内容に不備があっても、正確な分析ができません。中小企業において、会計データに誤りがあることは少なくないでしょう。

ヒューマンエラーは避けられないものです。自社なら決算書等と会計データを照らし合わせることで、ある程度は内容を精査できます。しかし、他社であれば会計データを提供してもらうことは現実的に難しく、精査ができません。それ故に、他社においてヒューマンエラーや自社とは異なる科目の使用、曖昧な仕訳、粉飾等があってもこちらにはわかりません。

正確な決算書等の情報がなければ、正確な分析をすることは困難です。

会計システム等を用いて手早く正確な経営分析を行おう

経営分析には、正確な決算書や会計データ等が必要です。日々刻々と変化する環境に対応するべく、経営者はそれらをなるべく早く知りたいでしょう。

人力ではヒューマンエラーが起こりますし、それを防ぐためにはダブルチェック等の施策が必要となります。そもそも業務が手作業である割合が高ければ、業務に必要な時間が多くなりがちです。

正確かつ迅速に会計事務を進めるには、会計システム等を導入し、業務を効率化・自動化させるのがよいでしょう。

会計システムとの連携で経理業務の効率化が可能な「oneplat」

oneplat」は、「納品書・請求書クラウドサービス」です。

取引先を登録することで、取引先から納品書・請求書をデータで受け取ることができます。受け取った請求書は、会計システムと連携して自動取込みが可能で、仕訳が不要です。

そうなれば経理業務に必要な時間を低減できますし、自動化によりヒューマンエラーを防ぐことができます。正確な会計データを作成する一助となるでしょう。

このサービスは電子帳簿保存法やインボイス制度にも対応していますから、安心してご利用いただけます。

是非、oneplatを活用することで業務を効率化・自動化し、経営分析に役立てませんか。

まとめ

経営分析は、内部分析と外部分析に二分されます。そして外部分析の主要なものが財務分析です。
内部分析は企業内部の経営管理に役立つ情報であり、外部分析は企業外部の利害関係者が融資や投資をする判断材料として役立つ情報です。

経営分析を行うことで、自社の強みや弱みを客観的に把握することができます。加えて、それを活用し、合理的な経営計画を練ることも可能でしょう。そして、利害関係者にとっても、経営分析は迎合されるものです。

しかしながら、経営分析には正確な決算書や会計データ等が必要です。また、それらの情報は早く知ることができる方がよいでしょう。

そのためには、会計システムの活用やアウトソーシングにより、経理業務を効率化・自動化することをおすすめします。

この記事を読んだ方で「受け取る」納品書や請求書を「電子化」することに興味がある方はいませんか?

oneplatは、納品書や請求書をデータで受け取れるサービスです。

会社組織の財務・経理部門や、支店・店舗・工場などの、 管理業務における下記の課題解決にoneplatは大きく貢献できます。

  • 会計/販売管理システムとの連携で仕訳入力が不要に
  • 取りまとめたデータを自動で取り込み
  • 総合振込データの作成や仕訳の消込も自動入力

導入後は複雑なデータ入力業務に時間を奪われることなく、本来の業務へ時間とコストを割くことが可能です。

このウェブサイトでは、他にもコスト削減・業務効率化に役立つ資料を無料で配布しておりますので、 是非、この機会に一度資料ダウンロードをしてみください。

oneplus編集部

この記事の執筆者

最短5分

財務・経理部門における
DXのお問い合わせやご相談についてはこちら

お役立ち資料はこちら