デジタル化が進んでいくなかで、電子請求書に触れる機会も増えてきました。
「電子請求書は紙にして保存しておけば大丈夫?」「電子帳簿保存法が改正されたけど、今までと何が変わったのだろう?」と疑問をもつ人も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、改正内容や、それによって変わる電子化した請求書の取り扱いについて解説いたしますので、是非ご参考にしてください。
請求書を電子化した場合の保存期間に関する疑問点を解説
Q.請求書を電子化したら保存期間は変わるのか?
今まで紙で保存していた請求書と、電子化した請求書では、保存期間は変わるのでしょうか。
A.請求書のデータの保存期間は紙の場合と変わらない
請求書の保存期間は、紙でもデータでも変わりません。
法人税法では、保存期間は7年間と定められています。また、欠損金の繰越控除を受ける事業年度は10年間保存しなければなりません。
したがって、保存期間は原則7年ですが、赤字のある年は10年になりますので、10年間保存すれば万全と言えるでしょう。
なお、保存期間はその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間です。
請求書の発行日から7年間ではないので、きちんと確認しておきましょう。
Q.電子化した後の紙の請求書(原本)の保存期間はいつまで?
請求書を電子化した後に残った紙の請求書は破棄してもよいのでしょうか。
紙の請求書を保存することにかかる業務負担やコストの削減が電子化の目的ですが、保存する必要はあるのでしょうか。
A.2022年に法改正!スキャナ後は破棄して問題なし
請求書をスキャナ保存した後の原本は、すぐに破棄することができます。
以前は、不正防止の観点から、最低年1回は定期検査をしなければならず、1年間は原本の保存が必要でした。
しかし、2022年の法改正によって定期検査が廃止されましたので、原本は保存せずに破棄することができます。
これにより、原本の保存に必要な経費や、書類の整理に要する人件費を削減することができるでしょう。
請求書の電子化にあたっては電子帳簿保存法を理解しよう
「電子帳簿保存法」とは、国税関係で必要な帳簿や書類をデータで保存することを認めている法律です。
デジタル化を推進していくなかで、経理業務の電子化による生産性の向上を図るため、2022年1月に「電子帳簿保存法」が改正され、大幅な見直しが行われました。
電子化した書類は、私たちにとって既に身近なものになっています。
ここでは、電子帳簿保存法の内容について理解しましょう。
2022年1月に改正された電子帳簿保存法とは?
請求書や領収書等税務書類の電子保存を認める内容の法律を指す
原則として、税務書類は紙での保存が義務付けられてきました。
とはいえ、請求書や領収書の量が多くて保存場所の確保が大変だったり、書類の整理に時間がかかったりと、課題が多いのが現状です。
電子請求書を保存するために、わざわざ紙に印刷している会社も多いのではないでしょうか。
そこで、業務の効率化を目的として、税務書類をデータで保存できるようにした法律が「電子帳簿保存法」です。
電子帳簿保存法で対象となる税務関係の書類の種類
電子帳簿保存法で対象となるのは主に下記の3種類の帳簿・書類です。
- 国税関係帳簿…仕訳帳・総勘定元帳・出納帳・補助簿等
- 国税関係書類…決算関係書類「貸借対照表・損益計算書・試算表・棚卸表等」
…取引関係書類「請求書・領収書・契約書・注文書・納品書・請求書(控)・
領収書(控)・契約書(控)・注文書(控)・納品書(控)等」 - 電子取引 …電子メール・インターネット・EDI等、データで授受した取引関係書類
1998年に制定された電子帳簿保存法の改正によってより実用的なものに
1998年に電子帳簿保存法が制定されましたが、当時は適用要件が厳しいことから、導入する企業が増えない状況でした。
そのため、適用要件を緩和して企業が導入しやすくなるように何度も改正を繰り返してきました。
そして2022年の改正では、ここ数年におけるリモートワークの普及や、DX推進の流れを背景に、大幅な見直しが行われ、より実用的な法律になりました。
ここからは、電子帳簿保存法の詳細について解説いたします。
電子帳簿保存法は3つの区分について保存要件を定めている
1-1.「電子帳簿等保存」とはどんなケースを指すのか?
電子帳簿等保存とは、自社で直接パソコン等に入力して作成した帳簿や書類をデータのまま保存することを指します。
主な帳簿や書類は、会計システムや販売管理システムを使用して作成した、仕訳帳・総勘定元帳・貸借対照表・損益計算書・請求書(控)・領収書(控)等。
1-2.「電子帳簿等保存」を行う際の保存要件
「電子帳簿等保存」は下記の要件を満たすことでデータによる保存が可能になりました。
- システム関係書類を備え付けておく(システムに関係するマニュアル等)
- パソコン、プログラム、ディスプレイ、プリンタを備え付けて、保存したデータをすぐに出力できるようにしておく(操作マニュアルも一緒に備え付ける)
- 税務職員にデータのダウンロードを求められた際に応じることができるようにしておく
この他にも「優良」となる保存要件があり、それらを満たした場合は税法上のメリットがあります。
2-1.「スキャナ保存」とはどんなケースを指すのか?
スキャナ保存とは、取引先から紙で受け取った書類や、自社が紙で作成した書類をスキャニングして保存することを指します。
主な取引関連書類は、請求書、領収書、契約書、注文書、納品書等です。
経費精算の領収書もスキャニングして保存すれば原本を破棄することか可能です。
紙の領収書は、経費を精算する社員と経理担当者の両方に紛失の恐れがあります。
経費精算をする事務所が別の場所にある場合は、送るのに時間がかかったりもするでしょう。
経費精算システムを利用すれば、スマホで領収書を撮影して申請できるので、扱いに悩まされることが減るかもしれません。
2-2.「スキャナ保存」を行う際の保存要件
スキャナ保存の保存要件には、入力期限の制限、タイムスタンプの付与、解像度が200dpi以上、カラー画像256階調以上等があります。
また、「取引年月日・取引金額・取引先」で検索できること、データと帳簿においての相互の関係性が確認できること、カラーディスプレイ等の見読可能装置を備え付けていることが必要です。
書類には重要書類と一般書類があり、一般書類の場合はカラー画像ではなくグレースケールでの保存でよい等、要件が異なる場合がありますので確認しましょう。
参照:https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/03.pdf
3-1.「電子取引」とはどんなケースを指すのか?
電子取引とは、はじめからデータで授受した書類をそのままデータでやりとりすることを指します。
主な取引関連書類は、請求書、領収書、契約書、注文書、納品書等。
電子取引に該当するものには、メール添付、インターネット、EDI、電子請求書発行システム、ペーパーレスFAX等があります。
3-2.「電子取引」を行う際の保存要件
電子取引の保存要件には、まず、保存されたデータの真実性を保持する措置として次のいずれかを行わなければなりません。
- タイムスタンプが付与済みのデータを授受する
- 授受したデータにすぐにタイムスタンプを付与する
- データの訂正・削除を行った場合に履歴が確認できる、または改変できないシステムを利用してデータを保存する
- 訂正・削除の防止に関する事務処理規程を制定・運用する
次に、保存されたデータの可視性を保持するために、パソコン、プログラム、ディスプレイ、プリンタを備え付けて(操作マニュアルも一緒に備え付ける)データをすぐに出力できるようにしておくこと。
そして、取引年月日・取引金額・取引先で検索できるようにしておくことが必要です。
改正された電子帳簿保存法でおさえたいポイント
電子保存にあたって事前の手続きは必要なくなった
これまで電子保存にあたっては、税務署長の承認を得るため、事前に手続きが必要でした。
しかし、今回の改正で、事業者の負担を減らすために事前の手続きは不要になりました。
電子帳簿保存法に対応可能であれば、すぐに電子保存をはじめることができるのです。
ただし、あらかじめ手続きをして、「優良な電子帳簿」の厳しい要件をクリアすると、青色申告特別控除の適用や、過少申告加算税が軽減される税制優遇が受けられます。
自社にとって、どちらがよりメリットがあるのか検討しましょう。
スキャナ保存において厳格だったタイムスタンプに関する要件が緩和された
今回の改正において、煩雑な作業を減らすことを目的に、厳格だったタイムスタンプに関する要件が緩和されました。
まず、スキャナで読み取る際の受領者の署名が不要になり、タイムスタンプの付与期間が3日から最長約2か月と概ね7営業日以内になりました。
また、データの訂正・削除の履歴が確認できるクラウドシステム等において、付与期間内にデータを保存したことが確認可能であれば、タイムスタンプが不要になります。
電子取引においてデータを紙にして保存できなくなった
今回の改正で最も注意すべき点は、電子取引に関するルールが変わったことです。
データで授受した書類は、データで保存することが義務化されました。
つまり、紙に印刷して保存することはできません。
法人企業から個人事業主まで、すべてが対象になっているので、多くの事業者が対応しなければなりません。
2023年12月31日までの猶予期間が設けられた
電子取引においては、システムの導入や改修が間に合わない等、すぐには対応できないことを考慮して2年間の猶予期間が設けられました。
ただし、あくまでも「やむを得ない事情がある場合」に限り猶予が認められていますので、早めに対応することが重要です。
また、2023年10月にはインボイス制度がスタートします。
電子帳簿保存法とインボイス制度の両方に対応したシステムの導入を検討すべきではないでしょうか。
請求書等帳票類を電子化するにあたっての注意点
取引先に事前の申し入れをしておく
請求書等を電子化するためには、取引先に協力してもらうことが必要不可欠です。
十分な説明をした上で、取引先のメリットになる点を伝える等、理解が得られるように事前に申し入れをしておきましょう。
また、取引先にも様々な事情がありますので、すぐに変更することは難しいかもしれません。
自社の努力だけでは、どうにもならないこともあると想定して、長い目で取引先の協力を仰いでいきましょう。
業務フローの見直し・社員教育といった事前準備が必要
請求書等を電子化するにあたっては、保存要件に対応するため、今までになかった業務フローを組み込まなければなりません。
そして、電子化による業務の効率化を図るためにも、業務フローの見直しが必須になります。
また、業務フローの変更は社員教育をする等、全社員に周知を徹底しなければなりません。
しかし、全社員が新しい業務フローを理解して、正しく行うことはすぐには難しいので、2024年1月からは完璧に対応できるように、早めに準備をしていきましょう。
請求書の電子化に対応するならクラウドシステム「oneplat」で同時に効率化を
クラウドサービス「oneplat」は請求書をデータで受け取り保存する「受領側」のサービスです。
つまり、oneplatに請求書を発行する側が納品情報を入力することで、電子化した請求書を受領できるのです。
もちろん、oneplatは電子帳簿保存法に対応しています。
また、インボイス制度にも対応していますので、安心してサービスを利用することが可能です。
oneplatで一元管理することで、納品書・請求書のペーパーレス化が可能になり、納品情報の入力や請求書の突合といった作業が不要になります。
その結果、業務コストや、作業時間を大幅に削減することができるので、oneplatは法改正に対応しつつ効率化していくのに適していると言えます。
まとめ
電子帳簿保存法は何度も改正を繰り返してきました。
今回の改正で面倒な作業が減ったとはいえ、電子取引における義務化には多くの事業者が対応せざるを得なくなりました。
電子帳簿保存法に対応済みで、今度の改正にも備えられるクラウド型のシステムの導入を検討してみてください。