【起業という選択は必然だった】泉卓真が社長になるまで──株式会社いずみホールディングス代表取締役社長・泉卓真にインタビュー

泉卓真社長へのインタビュー第8回目。前回は北海道の大手回転寿司チェーンで正社員となった泉社長が、新社会人としてどのように歩み、その後転職を繰り返すこととなったのか、さらにはどのようにして100店舗規模のラーメンチェーン店の展開に至ったのかをお聞きしました。

今回はそんな若き日の泉卓真が、ついに「社長」になった経緯を語っていただきます。

泉卓真社長が語る「心の豊かさ」とは

──前回のおさらいですが、当時23~24歳くらいの泉社長は、成長しそうだと狙いを定めて飛び込んだラーメン店を見事軌道に乗せ、運営のトップ層にまであっという間に駆け上がられたと伺いました。

せっかくそこまで上りつめられたにもかかわらず、その後その会社を離れて、ご自身の事業を立ち上げられるわけですよね。一体何があったのでしょうか?

泉 そうなんですよね。それは飲食に関わる仕事以外の業務も増えてしまったからです。例えば選挙とか。

そういうことはやりたくないと言うと、それはそれで経営者との関係が悪くなるわけです。さらには企業規模が急激に大きくなったものですから、色々な会社からたくさん人が入社してきて、皆が運営側のトップである私のポジションを狙っているという状態になりました(笑)。

結局、私は退社することになるのですが、そこで今度は私が好きだった回転寿司業界に戻り、回転寿司業態をこれから立ち上げるという会社に入って、立ち上げをやらせていただきました。立ち上げはうまく行ったと感じていました。記憶は定かではないですが、初月から60席前後のイートインだけで2,000万円以上の売上だったと思います。

──とても順調だったんですね。

泉 ですがその後、また辞めることになります。

──ええ……?!

泉 また、経営陣とうまくいかなくなってしまって。

――ラーメンチェーンの件といい、この回転寿司チェーンの件といい、立て続けになんということでしょう……。

泉 いえいえ、それで良かったんです。前回この件についてはお話しした通りで、やっぱり私に大きな問題があったのです。その時は未熟すぎて、まったく理解をしていませんでしたが。したがって、これはその結果なんですね。それから「万事すべて己の責任としてとらえる」ということを知り、いつまでたっても自分以外のせいにしていると、まったく成長が出来ないことを学びました。

経営者になるという選択肢を「思い出した」という社長

──そして、いよいよ、起業を決意されるときが来るわけですね。

泉 はい。最後にいた回転寿司チェーンの会社を退社するときに、社長が良いヒントをくれたんです。「お前みたいなやつは、自分で会社でもやらない限り働けないぞ」と。その時に私は、「なるほど!」って思って(笑)。いや、本当に。そのときはじめて『経営者』という道を思い出したんです。

──前々回の記憶が、ここで再び登場しました。

泉 そうなんです。それまでは経営者なんて不安定だと思ってきましたが、「サラリーマンをやっていて今、私はこんなに不安定じゃないか」と気が付きました。結果を出して昇進して社長に近づけば近づくほど、私みたいな人間は辞めるリスクが高くなるという経験をしたわけですし。ということはもはや、自分で会社をやれば一番リスクが少ないのではないかと……また勘違いをすることになるわけです(笑)

起業には他にもいくつか理由がありました。私は当時、そのように思い付いてからというもの、書店に行っては SOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)やアントレプレナーシップについての本、独立チャンスマニュアル等を、まるで会社説明の資料のように読んでいました。それらを手あたり次第に見ては、今後フランチャイズ展開をさせようとしている会社を探していたのです。ですがそこで、ふと思いました。

フランチャイズじゃなくて、自分でやったらいいんじゃないかな」って。

それから同時に、飲食店業界にいたので、流通の仕組みについても長らく疑問に思っていたということが重なりました。回転寿司の仕入れは魚が中心となるわけですが、僕の母方の実家が漁村でして、卸値と仕入値がどちらもわかっていたんですね。そうしたらなんと、漁村で買い取られている魚の価格と、そこから車でたった1時間半の距離の札幌という街で売られているものの価格には当時、7倍の差があったんです。

それを知ったときは「この差益はどこに行っているんだ!?」と心の底から思いました。うちの母方の実家の漁村なんて、全然裕福じゃなかったのに。ですから生産者って、こんなに搾取されているのだなといました。結論、水産卸売業を経営するとこんなに単純な話ではないのがよくわかるのですが、当時はそのように考えたという話です。

こうして、勤めていた会社の社長に言われたことと、自分でやってみようかなと思ったこと、水産の流通の仕組みには改善の余地があるかもしれないと思ったこと、3つが同時に重なったタイミングで「やらない選択肢はない」と思いました。

泉社長から起業チャレンジャーへ送る3つのアドバイス

──泉社長は、もしも起業された当時に戻れるとしたら、戻りたいですか?

泉 はい! 今より質も高く、スピードも速くやります。業種としては……やっぱりこれしか選択肢はなかったと思います。最初から IT ですとかテクノロジーに行ったり、はたまた金融でという発想はなかったと思います。

──折角ですので、これから起業してみたい方や、今事業を立ち上げる準備をしている方に、心構え等なにかアドバイスをいただけないでしょうか。

泉 いやあ、アドバイスできるものなんて何も持っていないです。

――何を仰いますか! ぜひお願いしたいのですが。

泉 うーん、そうですね。ではアドバイスではなく、私が「今」起業するとしたら考えるであろうことを、いくつかお話します。

ひとつ目は、今はもうきっと、準備期間が必要ない時代になっていると思います。ですので、やりたいと思ったら、やればいいと思います。やる・やらない、にくわえて、「今日は決めない」等決断をしないという決断を選択している時間も、もったいないと考えます。

ふたつ目に、昔よりもパーパスだったり、会社の存在意義が重要になってきていると思います。今だと SDGs を中心にした社会貢献や環境貢献等が、ビジネスモデル、もしくはミッションの中に入っていて、そこにしっかりと取り組んでいないことには、業種によってはお客様に選択をしていただくポジションにそもそも入れない、ということになりかねません。

ですので、昔以上に社会や環境という視点を考慮して、社会の問題解決ができるようなサービスや行動を取ることを頭に入れておかないと、のちのち苦しくなるんじゃないかなと思います。

最後にみっつ目ですが、今は人脈の構築がネットや SNS の発達によって昔より簡単になっているので、だからこそ気をつけなければいけないと思っています。

私自身は人脈構築をあまりしません。友人が増えるのはうれしいのですが、異業種交流会みたいなものにはまったく行かないです。そもそも自身のステージによって、人脈はどんどん変わって行くものだと思います。ですから、人脈はもちろん大事ですが、人脈構築作業は私は大事だとは思っていません。

でも、それが目的のように色んな会で配慮している若い子を、最近よく見かけます。手段と目的を違えているとまでは言いませんが、目的が定まっていないのに人と会ったって、自分の目的を明確に伝えられない以上、きっと人は動かないと思っています。

ですので、みっつ目に関して私が学んでいるものは、人の気持ちや心、それに他の会社の組織とか社会を動かせるだけの、何かを身に付けるということです。最近はその何かのひとつが言葉なのではないかと考えています。これからは人となりもそうですが、言葉で人や組織を動かせることはとても必要な能力になっていくでしょう。私はその勉強は、なるべく早くしておくことにこしたことはないと思います。

──経営者としてはもちろんですが、一社会人として常に磨いて心に留めおきたい、素敵なアドバイスです。貴重な機会をありがとうございます。

泉 こちらこそです。


【次回】

長いようであっという間のインタビューシリーズも次回がラスト。最後は泉社長の話術の秘密を、特別にほんの少しだけ教えていただきます。また、「社長」としての真の仕事とはなにかということについても語っていただきました。サービス開発や起業に興味がある方、全員必見です。どうぞお楽しみに!

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oneplus編集部

この記事の執筆者

  • 【恩師との出会い】泉卓真が社長になるまで──株式会社いずみホールディングス代表取締役社長・泉卓真にインタビュー

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