【株式会社デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長 鈴木康弘氏 インタビュー】DX推進における人材活用〜経営を合理化するDXの可能性とは〜 #1 DXに伴うイノベーションには、無限の可能性が宿っている

DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が頻繁に聞かれるようになった一方で、中小企業ではなかなかDXの導入が進まないと言われています。その理由のひとつに、推進する人材が不足していることが挙げられます。けれども、多くの経営者が「ITに長けたエンジニアがいない」「DXのスキルを持つ人材がいない」と嘆くなかで、真の理由には、DXに必要な人材の本質を見誤っていることがあるのかもしれません。そこで今回、ITと経営に精通し、デジタルシフトを目指す企業の支援で高い成果を導く鈴木康弘氏に、企業が理解すべきDX人材の育成や活用法について聞きました。

中小企業によるDXが、大企業のスピード感を超えていく?

2020年頃からDXという言葉が浸透し始め、コロナ禍を経て、現在は大企業の約7割は何らかのDXに取り組んでいる印象です。いっぽう中小企業は2022年に入って取り組むところが増え始め、DX元年と言ってもいいかもしれません。

ただ、大企業や中小企業にかぎらず、日本のDXはやや暗礁に乗り上げているとの想いもあります。というのも、DXという言葉は分解すると、デジタルとトランスフォーメーションに分けられますが、多くの日本企業は単なるデジタル化と勘違いしているように思うからです。
DXは「デジタルを活用した変革」であるのに、業務をデジタル化するだけに留まり、ビジネスを変革させるという状況にまで至っていない現状があるといえるのです。

その点、大手企業のそうした動きを見てきた中小企業の中には、DX本来の意味を理解し、デジタルを事業やビジネスの変革に結びつけて成果を挙げているところが多々あります。
というのもDXによる変革は、デジタルツールを使いながらも人の力で進めていくものですから、大手企業の数万人、数十万人がいる組織よりも、何十人、何百人のほうがフレキシブルに変えていきやすい面があるのです。その意味でも今後、中小企業によるDXが、大手企業のスピード感を超えていくのではないか、という気もしています。

新たなシナジーを生み出す動力になるのがDX

では今後、DXは中小企業にどのような価値をもたらすのか。それは、ひとつの企業そのものはもちろん、業界全体を変えていく可能性もはらんでいます。
従来のアナログの時代は、それぞれの業界が縦割りの中で伸びてきました。業界を牽引するトップ企業のありようを、後に続く中小の会社が真似することで成長してきた時代でもあったのです。
それが今は、縦割りの業界が壊れていく時代です。デジタルの力によって、どの企業でも縦割りを横串で通していくことができるようになり、固定概念を打ち破るイノベーションによって、中小企業が業界トップに立つことができる時代になりました。

これまで1社単独で行っていたことを、他の企業や業界と共創し、異なる組織とつながることで大きな力に変えていく。業界や業態の枠組みを取り払い、共創によって新たなシナジーを生み出す動力になるのがDXです。そこから生まれるイノベーションには、まさに無限の可能性が宿っていると思います。

DXの推進に不可欠なのは、やはり「人」の存在

DXによるイノベーションを考える上で重要な役割を担うものに、データの存在があります。各業界や企業のもつ様々なデータを、デジタルの力で共有させていくことで、価値を最大化させる。これも業界の枠組みを超え、ビジネスに大きな変容をもたらすものとなります。

けれども、データはあくまでも過去のものであり、検証には役立っても、未来を創造するエンジンにはなり得ません。未来を創り出すイノベーションは、人の頭で考えるしかないのです。DXの本質は、縦割りの壁に横串を通して繋げ、新たな価値を生むことと言いましたが、不可欠な存在となるのはやはり人であるわけです。

DXでは行動に対する「仮説」を立てる能力が重要

では、企業におけるDXに必要なのは、どのような人材なのか。実は多くの人が、ここで勘違いしがちです。
大手企業が「DX人材を採用」と銘打ち、ITを専門的に勉強してきた理系の新卒学生を積極的に採用することが増えています。また近年、データサイエンティストという専門職がもてはやされ、DXを牽引するポジションに登用されることも多いようです。

もちろん、彼らもDXを進める上での必要な人材であることは確かですが、最も大切な、DX全体の絵を描く役割を任せるには不十分であることも少なくありません。
つまり、DXを推進する上で重要なのは、人間がどういうふうに行動していくかという「仮説」が立てられるかどうか。データの分析よりも、それをもとに、変革を実現するための戦略的な仮説を立てる能力が何より求められるのです。

その意味で、DXに不可欠なものは2つあり、ひとつ目は統計学、2つ目が心理学です。中でも仮説を立てるスキルのベースになるのは心理学であり、人間力。この統計学と心理学の2つの組み合わせが、DXを進める人材にとっての大事な素養といえるわけです。

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■ 鈴木康弘(すずき・やすひろ)
株式会社デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長/一般社団法人日本オムニチャネル協会 会長/SBIホールディングス株式会社 社外取締役
大学卒業後、1987年にシステムエンジニアとして富士通に入社。1996年にソフトバンクに転職、営業・新規事業企画、ネット書店イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を起業。その後、会社ごとセブン&アイHLDGS.に移り、取締役CIOとしてオムニチャネル戦略を推進。2017年にITコンサル会社デジタルシフトウェーブを起業した。現在はデジタルシフトを目指す企業の支援等を中心に幅広く活躍中。

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oneplus編集部

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  • 【株式会社デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長 鈴木康弘氏 インタビュー】DX推進における人材活用〜経営を合理化するDXの可能性とは〜 #2 失敗と構築を繰り返すことによって人は育つ

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