【株式会社圓窓 代表取締役 澤円氏 インタビュー】日本企業はDXを推進できるか!?〜マインドセットと具体的なアクション〜 #1 経営者が自ら意志と覚悟をもって変革に乗り出すのが吉

DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義は「IT技術を活用した変革」。つまり、デジタルによる変換でなく、「変革」というところに重要なカギがあります。さらに言えば、既存の価値観や枠組みを覆すような革新的なイノベーションをもたらすものであり、それゆえ経営者の意志や想いを抜きにして語ることができない変革と言えます。激動する経済状況にある今、その意味での日本のDXの現在地はどこにあるのか。日本マイクロソフト時代に多くのDX支援を手掛け、自ら代表を務める株式会社圓窓で数々の事業変革に携わる澤円氏に、DXを進める上で必要な経営者のマインド等について話を聞きました。

DXの前段階のデジタライゼーションで立ち止まってしまう企業が多い

まず、DX(デジタルトランスフォーメーション)の現在地について話をすれば、多くの企業がデジタル化とDXを混同してしまい、DXの手前の地点で立ち止まっている気がします。というのも、既存の業務プロセスのデジタル化は「デジタライゼーション」と呼ばれ、今や企業にとって不可欠のものですが、それをDXと勘違いしているケースが非常に多いのです。

DXはデジタライゼーションの次の段階として、業務のあり方自体を大きく変えていくことで、トランスフォーム(変換)を意味します。
つまりDXの実現には、前提にあるデジタライゼーションを進めることが必須であるにもかかわらず、その地点で立ち止まっている企業が非常に多い。これが今の日本企業におけるDXの状況だと思います。

データを活かし、業務や収益構造を大きく変えるのがDX
例えば、店舗での代金決済が現金で行われる場合は、売上が自動的にデータ化されることはありません。
では、これをキャッシュレス決済に切り替えたとします。デジタル化によって売上や客単価がデータとして自動把握できる状況にはなるものの、まだDXとは言えません。デジタライゼーションによって、DXの材料がそろった段階に過ぎないのです。

キャッシュレス決済というデジタル化だけではDXとは言えず、重要なのは、そこで得られたデータを活かし、業務のあり方や収益の上げ方を大きく変えていくこと。そこまで実現できて初めて、DXの入り口に立った段階であると認識してほしいのです。

「時間」という取り返せないものを失っている愚かさ

飲食や小売等の業界を例にとってみると、日本は世界から見てもキャッシュレス決済の導入が非常に遅れています。つまり、デジタライゼーションさえも実現できていない現状があるわけです。
理由として、キャッシュレス導入に伴うコスト増や手数料負担を嫌がる点が挙げられますが、一方でそれ以上のコスト負担が生じていることに気付いていないか、気づいていても二の足を踏んでいる状態なのです。

売上や来店客数の集計、客単価の算出をすべて手計算で行っている場合、「時間」という大切なリソースを明らかに消費しています。
時間とは1日24時間であることが絶対で、増やすことは決してできません。手作業が生じている分、その人にとっての1日の時間が絶対的に減っているわけで、時間という名の貴重なコストを失っているに等しいのです。

もっと言えば、その人の人生の時間が減っています。これは真面目に言いたいことですが、人生って1回かぎりのもので、究極のカウントダウンでしょう。それなのに、機械にやらせればいいものをわざわざ手作業で行い、時間という極めて貴重な、二度と取り返せないものをみすみす失っている。そのことの愚かさに、もっと多くの人が気づいてほしいと思います。

DXへの道筋を描くために自社をどのように成長させたいのかを明確にする

DXへの道筋を描くなら、まずは今ある業務プロセスをデジタル化するのが第一歩です。そして肝心なのは、どうやってDXとして変革するかですが、そこに関して私はどの会社にでも通じるような明確な答えを持っていません。つまりその先は、経営者各々の意志や理念、覚悟によって形にしていく領域だからです。

自分の会社や店舗をどのように成長させたいのか。どういう人たちにどんなサービスを提供したいのか。そこに根差して考えてはじめて、トランスフォームの中身が決まります。
デジタル化で得られたデータをどのように活かし、やりたいことをどう実現していくのか。経営者が自ら意志と覚悟をもって変革に乗り出すことが絶対的に大事なのです。

DX推進のために社内のコア業務とノンコア業務を見極める

では現在、どうしてデジタライゼーションおよびDXが、日本の中小企業においてなかなか前に進まないのでしょうか。
理由のひとつに、日本ではITに関して知識のある人が、ベンダーに偏り過ぎている実情があるからだと思います。デジタル化をベンダーに外注してしまうため内製化できず、社内にノウハウがたまらないのです。

では、ベンダーと同等のITリテラシーの高い人材を社内に入れると流れが変わってくるのか? 答えはイエスですが、一方で言うは易しで、例えば、中小企業においてIT部分だけを担う人を雇用するのは、ハードルが高いものがあるでしょう。デジタライゼーションの業務領域はバックオフィスが中心ですから、そのためだけに人を入れるのは、現実問題なかなか難しいと言わざるを得ないのです。
そこで必要になるのが、次の考え方だと私は思います。社内のコア業務とノンコア業務を見極めて棲み分けを行い、ノンコア業務をシェアする考え方を持つことです。

コア業務の時間をDXで最大化し、ノンコア領域は「非競争」だからシェアして良い

コア業務とは、自社のビジネスモデルにおいて、代替やシェアすることができない固有の領域にあり、自社内で必ずやらなければいけないものです。まずは業務の中からそれを抜き出すことに徹底的にフォーカスし、社員のなかで共有します。つまりDXでは、コア業務にかける時間をデジタライゼーションによって最大化することが大事なのです。

逆にコア業務以外のノンコア業務は、外出しにできる領域であり、徹底して効率化をはかって良いものです。そこは競争領域ではありませんから、シェアすることも可能です。
例えば、社内の決済業務はその根源みたいなもので、仕入れも同様かもしれません。そうしたノンコア業務で自分たちの手をわずらわせないようにする。できるかぎり自動化してシェアし、生まれた時間をコア業務へと振り向けることが不可欠なのです。

デジタルをインフラと捉えてシェアする

ノンコア領域をシェアするためのアプローチには、私は2つの方法があると考えています。その1つが、「人」に頼るという部分です。
もしもあなたの店舗や会社に、商店街等の横の繋がりがあるようなとき。商店街の中のIT担当といったポジションを作り、その人に各店舗のノンコア領域、つまりは決済や仕入れ等のバックオフィス業務を共通化して担ってもらうのです。古い言葉でいうと、「向こう三軒両隣」。このイメージでノンコア領域をシェアしてしまうわけです。

そしてもう1つが、最近流行りの「ノーコード・ローコード」のツールを使う手法です。ゼロもしくはごく少ないプログラムコードでアプリケーションの開発ができるもので、プログラミングの専門知識がなくとも開発が可能になる手法です。
これはコーディングがほとんど必要なく、運用もクラウドでやってくれるので、専門のエンジニア等が必要ありません。処理したいデータだけあれば良く、ノンコア業務のシェアがあらゆる方法で可能になるわけです。

だって、考えてもみてください。どの企業も、電気も水道も同じリソースのものを使っていますよね。店舗や会社ごとに分けるのではなく、同じリソースのものをお互いにシェアしています。それは、電気も水道も競争領域ではないからです。
であれば、デジタル領域もすでにインフラなんですよ。クラウド環境の充実で、それがいっそう現実になっているわけです。

例えば、コロナ禍で浸透したウーバーイーツをイメージしてください。これは、言ってみればデリバリーのインフラです。デジタル化で店舗と顧客、デリバラーのネットワークをインフラとして構築し、各飲食店は自社のデリバリー網をもたずに、それをシェアして活用することで新たな売上のチャネルをつくったのです。
ですから、ノンコア領域はデジタル化してシェアしてしまったほうがいい。自分たちの独自領域としてキープすればよいのはコア領域だけであり、そこに経営資源を徹底的に注入することを強くお勧めします。もはやそうした思考が不可欠な時代であることを強く認識してほしいと思います。

NEXT ▶︎ #2 「自社に合った施策」こそが選択のポイントになる

■ 澤 円(さわ・まどか)
株式会社圓窓 代表取締役/元・日本マイクロソフト株式会社業務執行役員/武蔵野大学専任教員

立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年大手外資系IT企業に転職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEとなり、最新のITテクノロジーに関する情報発信の役割を担う。2006年よりマネジメントに職掌を転換し、ピープルマネジメントの実践も。直属の部下のマネジメントだけではなく、多くの社内外の人たちのメンタリングも幅広く手掛けている。数多くのイベントに登壇し、プレゼンテーションに関して毎回高い評価を獲得。2015年より、サイバー犯罪に関する対応チームにも参加し、2019年10月に、(株)圓窓 代表取締役に就任、企業に属しながら個人でも活動を行う「複業」のロールモデルとなるべく活動し、2020年8月に独立。また、美容業界やファッション業界の第一人者たちとのコラボも業界を超えて積極的に行っている。

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oneplus編集部

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